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 壁に近づくと危ないとはささやかれていたけれど、理由については聞かされていなかった。

 太陽は天頂に達し、研ぎ澄まされた鋭い光が、古いセメントブロックの壁の表面に広がった、誰かの(でも誰の?)とりとめのない悪意のような黒いしみを削り取ろうとしていた。

 しかし、はらはらと舞い落ちているのは、黒ずんだ剥片(はくへん)ではなく透明な光のかけらだった。それらに触れられるたびに、壁の前に生えた草の葉の輪郭はかすかな銀色に震え、壁の前には途切れ途切れの緑の沈黙が広がっていた。

 あれ、と思った。壁そのものの高さは2メートルくらいだろうか。光を浴びているのにかかわらず、影が見当たらない。

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