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常夏通信

その20 74年目の東京大空襲(7) 戦争被害受忍論 源は「一億総懺悔」論か

敗戦後初めて開かれた第88回臨時帝国議会で、貴族院・衆議院の本会議場(後の参議院・衆議院の本会議場)で所信表明演説する東久邇宮稔彦首相(手前演壇上)=1945年9月5日撮影

 戦争報道=8月ジャーナリズムを一年中している私こと常夏記者は、探偵活動も行っている。今、捜査に力を入れているのは「戦争被害受忍論」の源流を突き止めることである。「戦争で国民全体が何らかの被害に遭った。だからみんなで我慢しなければならない」という国民分断の「法理」は、だれがいつ、思いついたのか。

 私は源流の一つを敗戦直後の1945年8月28日、東久邇宮稔彦首相の発言に見る。

 この皇族首相は、同日の記者会見で敗戦の理由について「政府、官吏、軍人自身がこの戦争を知らず知らずに敗戦の方に導いた」と述べた。さらに「国民の道義のすたれたのもこの原因の一つ」であり、「軍官民、国民全体が徹底的に反省し懺悔(ざんげ)しなければならぬと思う、一億総懺悔をすることがわが国再建の第一歩」とも述べた。

 毎日新聞は同月30日の朝刊で、この発言を含む首相インタビューを、「国内団結は総懺悔から」などの見出しとともに、掲載している。

 さらに9月5日の大日本帝国議会における所信表明演説。

 「敗戦の因(よ)って来る所は固(もと)より一にして止まりませぬ、前線も銃後も、軍も官も民も総(すべ)て、国民悉(ことごと)く静かに反省する所がなければなりませぬ、我々は今こそ総懺悔し、神前に一切の邪心を洗い浄(きよ)め、過去を以て将来の誡(いまし)めとなし、心を新たにして戦の日にも増して、挙国一家、乏しきを分かち苦しきを労(いたわ…

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栗原俊雄

1967年生まれ、東京都板橋区出身。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院修士課程修了(日本政治史)。96年入社。2003年から学芸部。担当は論壇、日本近現代史。著書に「戦艦大和 生還者たちの証言から」「シベリア抑留 未完の悲劇」「勲章 知られざる素顔」(いずれも岩波新書)、「特攻 戦争と日本人」(中公新書)、「シベリア抑留 最後の帰還者」(角川新書)、「戦後補償裁判」(NHK新書)、「『昭和天皇実録』と戦争」(山川出版社)など。

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