なぜ親が「勉強しろ」と言ってはいけないのか 開成中高校長・柳沢幸雄さんに聞く
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東京大の合格者数が長年全国トップの開成高校では、ほとんどの生徒が「学校が楽しい」と感じているそうです。校長の柳沢幸雄さんは、小学生から大学院生まで国内外で幅広い世代に教えた経験を持ち、米国の名門ハーバード大で優秀教師に選ばれたこともあります。「やる気」レシピを教えてもらいました。
――先生自身、自分の子どもを教えるのが一番大変だったそうですね。
◆子どもにとって親は親。先生ではありません。だから親が教えるのは間違いです。では親は何をすればいいのか。よく話を聞くことと、「勉強しろ」と言わないことです。
――なぜよく話を聞くことが必要なのでしょうか。
◆例えば10歳の子どもにとって日本語を学んだ期間は10年に満たない。大人は中学以来、英語を10年ほど学んでいますが、「英語で自己紹介してください」と言われたらすらすら話せますか。それと同じで10歳の子どもにとってちゃんと相手に伝わるようにしゃべることはそれだけ大変なことです。だからよく聞いてあげる。しゃべる機会があるほど頭の中が整理されてきます。知識を再構成して、相手にわかるように伝えるということはそういうことなんです。
――聞くコツは。
◆話が続かなくなったら質問してあげる。そのときは英語で習う六つの疑問詞を一つずつ使う。5W1Hです。例えば子どもが「今日学校、楽しかった」と言ったら「何が(What)?」と聞いてあげる。「砂場で遊んだ」と答えたら「だれと(Who)?」。一つ一つ聞いて、それを繰り返していくと、子どもは「そうか、こういう順番で話せばわかるようになるんだ」と理解するようになる。受験用語で言えばこれは「読解力」の育成です。
――そうは言っても親としては算数や国語も勉強してほしいと思ってしまいます。
◆子どもに算数や国語を教えてもらえばいいんです。子どもが学校で習ったことを親が教えてもらう。子どもにとって相手に「教える」ということは最良の復習になります。宿題はキッチンテーブルや居間でやる方がいい。やり始めたら声をかけて教えてもらう。うるさがられたら黙って横に座って本を読むというのもいいかもしれません。
――つい「勉強しろ」と言ってしまいます。
◆自分が子どもの頃、そう言われて意気揚々とやりましたか? 子育ては常に自分が子どもだった時はどうだったか思い出しながらやってください。例えば子どもと同じ年齢だった頃の自分…
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