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社説

中村医師の銃撃死 命尊ぶ信念引き継ぎたい

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 志半ばであったはずだ。しかし、足跡はアフガニスタンの大地に深く刻み込まれている。

     混乱が続くアフガンで長年にわたり人道支援に携わってきたNGO「ペシャワール会」の医師、中村哲さんが、現地で武装集団に銃撃され亡くなった。

     並外れた信念と行動の人だった。

     パキスタンで始めた医療支援をきっかけに、アフガンに軸足を移していった。アフガンは2000年に大干ばつに見舞われ、飢えと渇きが広がった。命を救うには清潔な水と食料が必要だった。

     医療の枠を超え、井戸や農業用水路の建設に取り組んできた。掘った井戸は1600本、1万6500ヘクタールを沃野(よくや)に変えた。土木は独学だ。

     アフガンの若者が武装勢力に加わる背景には、貧困がある。干ばつと戦火で荒廃した農業の再生による貧困解消が、負の連鎖を断ち切るという確信があった。

     安倍晋三首相は「命がけでさまざまな業績を上げられた。本当にショック」と悼んだ。

     しかし、首相が14年に集団的自衛権行使を巡り、海外NGOのための自衛隊任務拡大に言及した際、中村さんは「不必要な敵を作らないことこそ内閣の責任」とクギを刺した。武力による紛争解決に異議を唱えていた。

     アフガンは治安の悪化に歯止めがかからない。01年の米同時多発テロ後、米軍とタリバンなど反政府武装勢力との戦闘が続く。

     国連によると、昨年だけでも3804人の民間人が犠牲になった。人道援助団体も攻撃対象になり、今年1~8月で27人が死亡した。

     治安悪化を理由に援助は先細る。銃撃事件を受け、さらに及び腰にならないか心配だ。両国が協力して事実関係解明に努めてほしい。

     ペシャワール会は活動を継続する方針だ。国際社会はアフガンを見捨てずに、志を引き継ぐ責任がある。

     訃報を受けてアフガンでも悲しみの声が広がっている。文化や伝統を尊重し、地域に根ざした支援で信頼を得てきたことの表れだろう。

     中村さんはかつて、人々との相互信頼が武器よりも大事だと語っていた。その思いをいま一度、かみしめたい。

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