うたい文句だった「コンパクトな大会」には程遠い状況だ。
東京五輪・パラリンピックを巡る国の支出が、1兆600億円に上るとの試算を会計検査院が公表した。
現段階で東京都は1兆4100億円、大会組織委員会は6000億円を負担することになっている。合計で大会の総経費は3兆円を超える。マラソン、競歩コースの札幌移転に伴う費用も確定しておらず、経費はさらに膨らむだろう。
招致時に総経費は約7300億円と見積もられていた。最終的な総経費はその4倍に達する見込みだ。
総経費は、開催に直結する「大会経費」と道路整備などの「大会関連経費」に分けられる。特に膨張を続けるのが関連経費だ。国は今年度までの7年間で2197億円の予算を計上したが、会計検査院は他にも関連事業があると判断している。
今回の調査では340事業が対象とされた。だが、関連経費かどうか、国と会計検査院との間で見解が分かれているものもある。例えば、水素社会実現に向けた燃料電池産業車両の導入補助や、地域の農産物や食文化を映像化して海外に発信する取り組みの支援などだ。
五輪・パラリンピックは国家事業として準備が進められている。その機会に乗じて各府省庁から数々の事業が申請されたのではないか。政府は会計検査院の指摘を厳しく受け止めなければならない。
「大会経費」も総額1兆3500億円に膨らんでいる。組織委が近く最新の予算を発表する見通しだが、さらなる増額は許されない。
施設の後利用にも不安材料はある。完成した国立競技場は、民間業者に運営権を売却する計画の策定が先送りになった。業者のめどが立たない場合、所有者の日本スポーツ振興センターが管理しなければならない。だが、財源のスポーツ振興くじは売り上げが低下している。
五輪・パラリンピックは肥大化し、今や世界的な大都市でしか開催できない状況だ。立候補都市は減少傾向にあり、国際オリンピック委員会は危機感を募らせる。
年が明ければ、大会準備は最終点検の段階に入る。政府は税金がどれだけ使われるかを改めて精査し、肥大化に歯止めをかけるべきだ。