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今週の新刊
◆『私の家』青山七恵・著(集英社/税別1750円)
青山七恵の芥川賞受賞作『ひとり日和』は、若い女性が老女と同居する話だった。新作短編集『私の家』は、恋人と別れ、仕事も辞めた27歳の梓が、祖母の法要をきっかけに、実家へ舞い戻る物語。
法要を終えても家に居続ける梓。元体育教師で元気な母。梓が無口なのもうなずける。母は言う。「生活をするということは」「埃をためること」。「嵐」ではその母の視点で、「お茶の時間」では大叔母の孤独が描き出される。
「おばあちゃんの日」では祖母が生きていた頃、まだ子供の梓、教師だった母が浮かび上がる。記憶が語り手となって、同じ家で暮らした人々の顔と顔が、別々の光から照射されるのだ。梓の両親に秘め事があるらしいことも分かるが、風のように過ぎていく。
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