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人命救った「ペアで避難」 要支援者への取り組み 個人情報保護法が障壁に

深刻な浸水被害を受けた長沼地区のハザードマップを説明する笹井眞澄さん=長野市津野で2019年11月22日午前10時38分、ガン・クリスティーナ撮影

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 長野県内に甚大な被害をもたらした台風19号が上陸してから12日で2カ月。民生委員が、個人情報保護の制約の中で地域住民を救うため工夫を凝らしている。

 「まさか、こんなところで役に立つとは思いませんでした」

 10月12日夕、事前にペアを組まれていた近所の男性と避難所に入った渋沢紀美恵さん(79)が振り返った。渋沢さんが住む長野市津野は千曲川沿いで、堤防決壊で甚大な浸水被害を受けた。86歳の夫と2人暮らしで、近所の男性が「逃げましょう」と声をかけてくれた。「2人でいれば大丈夫だろう」と思っていたという渋沢さんは「声をかけてくれなかったら逃げなかった」と感謝している。

 2年前、このように要支援者と支援する側を隣近所で組む仕組みを導入したのは津野地区の民生委員だった笹井眞澄さん(67)だ。

 「白馬の奇跡」と呼ばれた住民同士の救助活動で死者ゼロに抑えた2014年の県北部地震にも影響を受け「隣近所仲良くしてもらった方が声掛けをしやすいし、『誰かがやるだろう』と無責任になってはいけない」と着想。誰が何をするのかの責任を明確にする仕組みを取り入れた。

 今回、把握しているだけで5組が一緒に逃げたという。笹井さんは「防災訓練でもペアで避難する訓練をやるべきだ」と痛感するが「今は秘密主義で誰が組まれて、誰が支援を受ける人なのか公にできない」と個人情報保護法が障壁になっている現状を指摘する。

 同市大町地区では、民生委員の深沢悦子さん(69)が独自にまとめた要支援者の名簿が生きた。地区を7の集落に分けた「常会」の常会長に、それぞれにいる高齢者や障害者らの情報を「いつ何が起こるか分からないから」として事前に共有するようにしている。

 深沢さんは「民生委員と区長だけでは対応しきれない。既に浸水していたら要支援者の自宅に行けない可能性もある」と共助の必要性を強調した。常会長には「できるだけどんなおじいちゃんおばあちゃんがいるのか頭の片隅でもいいから」把握するよう声掛けするのは「身体不自由な人のところにはおんぶできる人が行かないと意味がないから」だ。

 要支援者の情報は本人の同意なしに事前提供ができない。深沢さんは「今回は事前に伝えたことでスムーズに対応できた。自分も知られたくない情報はあるが、災害が発生した時のことを考えると個人情報保護の壁を乗り越えないといけない」と制度の柔軟な運用と住民の理解を促す。【ガン・クリスティーナ】

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