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毎日新聞

アスリート交差点2020

再現力 試練バネに捨て身でアタック=陸上・山県亮太

 春先に背中を痛めた2019年は、今までで一番試練を感じた年でした。腰や足首などの故障は以前もありましたが、東京五輪前年にもかかわらず、周囲や自分自身の期待と実際の結果に大きなギャップがあったのです。

     「なんだろう、この気持ち悪い感じは」。3月の米フロリダ合宿中、寝返りの際に違和感を覚えました。体をねじると痛みますが、4、5月は試合が続いていたので、休まず毎日のようにはり治療を受けました。肉離れの場合は3カ月で良くなりますが、6月になっても改善に向かう感じがしません。スピードは出ず、いつ痛みが無くなるかも分からない。非常にしんどい時期でした。

    今年5月のセイコー・ゴールデングランプリ大阪の男子400メートルリレーで好記録を出して喜ぶ、山県亮太(右から2人目)ら。桐生祥秀(左端)は17年、小池祐貴(左から2人目)は今年、100メートル9秒台をマークした=大阪市のヤンマースタジアム長居で2019年5月19日、平川義之撮影

     アスリートは普段、厳しい練習や食事制限でストレスを感じることもあります。「逆にストレスが良くないのでは」という考えも頭をよぎりましたが、思考停止はしたくないと、踏みとどまりました。練習をサボったり、暴飲暴食をしたりすることは一度もありませんでした。

     一人でいると気持ちが崩れてしまいそうだったので、とにかく誰かと会うようにしました。これまでで一番、外出したかもしれない。周囲の人たちに助けられました。

     引っ越しを思い立ち、転職の合間で休みだった慶大競走部の同期と粗大ゴミを捨てに行ったりしました。慶大ゼミの後輩の土居愛実さん(セーリングで五輪2大会出場)に神奈川・江の島で船に乗せてもらい、魚釣りをしたり、海に飛び込んだりもしました。趣味を増やしたいと、思い切ってピアノを始めました。

    今年、自身最後の男子100メートルとなった5月のセイコー・ゴールデングランプリ大阪で、5位に入った山県亮太(左端)。中央は2位でフィニッシュする桐生祥秀で、右は1位のジャスティン・ガトリン=大阪市のヤンマースタジアム長居で2019年5月19日、久保玲撮影

     背中の痛みは悪い姿勢で高い負荷をかけ続けたことが原因と考えています。適切に鍛えて適切に動くようにすることで背中の痛みがゼロになると思い、トレーニングの姿勢から見直しています。同じ失敗を繰り返さないということを心がけてきたので、今回の背中の故障を克服できれば、競技人生の中でも大きな収穫になります。

     今年、心身ともに「底」を経験した分、気持ちが楽になり、肝が据わりました。20年は守りに入らず、捨て身でアタックできます。痛みのない状態で走れれば、意識せずとも記録は出ます。19年に得た経験を経験のままで終わらせることなく、結果につなげたいと思います。

    尊敬する人を教えてください。

     俳優の方々です。緊張するはずのカメラの前で、台本にのっとって自然な演技をしていることがすごいです。僕は緊張する性格で、結婚式の2次会のあいさつでも1週間前からナーバスになるほど。人前で話す機会が増えてきましたが、なかなか慣れません。競技者として「試合前は近づきがたい」と言われるほど集中できる面はプラスですが、一番良いことは緊張せずに集中できること。緊張しないコツを知りたいです。

    山県亮太(やまがた・りょうた)

     広島市出身。2015年4月、セイコーホールディングス入社。16年リオデジャネイロ五輪400メートルリレー銀メダル。18年ジャカルタ・アジア大会の100メートルは10秒00で銅メダル。27歳。