2019年生まれの子どもの数が、90万人を下回る見通しとなった。1899年の出生数の統計調査開始以来、初めてのことだ。
出産に適した年齢の女性の人数自体がすでに減っており、出生数の低下は長期的なトレンドだ。しかし、90万人割れは国の推計より2年早いペースだ。昨年は92万人弱だった。今年1~9月の前年比5・6%減というペースが続けば、87万人を下回る可能性もある。
政府は、少子化に歯止めをかけられていない現状をより深刻に受け止めるべきだ。
子どもを持つかどうかは個人の自由で、国が押しつけるものではない。しかし、望んでも結婚や出産をできない現状がある。政府は、希望通りになった場合の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)を1・8と見込み25年度の実現を目指すが、18年は1・42にとどまる。
厚生労働省の調査で、理想の数の子どもを持たない理由の最多は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」だ。10月から幼児教育・保育無償化がスタートしたが、大学などの無償化は低所得世帯にとどまる。
2番目の理由としては、働く女性の増加で晩婚化が進む中、高齢出産へのためらいがある。政府が女性活躍を推進する一方で、20代で結婚・出産してもキャリアを積めるような働き方が見えていない。
他にも、核家族化で子どもの祖父母の支援を受けづらいことや、子育てをしにくい社会だという親の意識など、幅広い要因がある。
子育ての負担ばかりが目につき、安心して子どもを育てられる環境があるとは実感できないのだろう。
少子化は東アジア諸国に共通した課題だ。働き手や社会保障の支え手が減り、社会の活力やセーフティーネットが弱まりかねない。想定以上に少子化が進めば、さらなる社会保障サービスの削減や負担増も浮上してくるだろう。
少子化社会対策大綱は年度末に向け、5年ごとの見直しが進んでいる。施策を総点検し、税制面での優遇を含めた経済的支援の拡充や働き方改革による男性の育児参加の促進、正規雇用による収入の安定などが必要だ。財源の確保も欠かせない。