五輪開催国の治安当局は、事件や事故を想定したシナリオ作りに頭を悩ませる。警備上の対策に生かすためで、2000年のシドニー大会では、当時としては五輪史上最多の800本のシナリオが作られた。
脅威の想定について、東京五輪・パラリンピック組織委員会のある幹部は「リスク(危険)ベースとリソース(資源)ベースがある」と指摘しつつ、「最後はリソースベースで決めざるをえない」と明かした。あらゆる事態に備えるのが理想だが、大地震や01年の米同時多発テロのような大惨事ばかりを想定していては、予算や人員が底を突く。「どこまで資源を投入するかは腹を決めなければならない世界で、本当に悩ましい」(組織委幹部)
1972年の旧西ドイツ・ミュンヘン大会は、脅威予測の難しさを世界に認識させた。9月5日午前5時15分、ミュンヘン警察で働いていた心理学者のゲオルク・ジーバー氏(84)は自宅の電話のベルで目覚めた。「大変なことが起きた」。同僚の声だった。「この時間なら、パレスチナ(系地下組織)による事件が起きたに違いない」と直感した。
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