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余録

ロンドンに留学した夏目漱石は…

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 ロンドンに留学した夏目漱石(なつめそうせき)は街角で「泥炭(ピート)を溶いて身の周囲に流した」ような煙霧に囲まれ、途方に暮れた経験がある。重苦しい茶褐色の霧は視界を奪い、足元も「穴蔵(あなぐら)の底を踏む」ような危うさだった▲「霧のロンドン」というが、16世紀ごろからつい前世紀までそれは自然の霧と煤煙(ばいえん)のまざったスモッグ(煙霧)だった。褐色の「エンドウ豆のスープ」などと呼ばれて視界を奪い、その臭いも強烈だったというから風情どころでない▲1952年に5日間も滞留し1万人以上の死者を出した硫酸霧で、ようやく大気汚染対策に本腰を入れたロンドンである。スモッグは薄れたが、最近またも先行きの視界を奪う不確実性の霧の発生源となったのは、英議会周辺だった▲欧州連合(EU)離脱をめぐって政治的混迷が続いていた英国の下院総選挙で、来年1月の離脱を掲げたジョンソン首相の保守党が圧勝した。これによりEUと合意した協定にもとづく離脱への道筋が大きく開かれるかたちとなった▲世論調査はEU残留派優勢の中、秩序ある離脱を掲げる保守党に安定多数を与えた総選挙である。合意なき離脱の破局をはじめ、先行き何があるか分からぬ濃霧の中をさまよった国民には、まずは霧からの脱出が得策とみえたようだ▲EUもこの選択は歓迎のようで、市場にも安心感が広がった。だが前例のない離脱の先行きは依然不透明で、英国内にもかえって広がった亀裂、対立を抱える。なおも足元の危うい21世紀の「霧の都」である。

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