東京散歩や町歩きが盛んになっている現在から考えると不思議だが、江戸時代には散歩という風習はなかった。
隠居はともかく大の男が昼間からぶらぶら町を歩くことなど無用のこととされた。「犬の川端歩き」と軽蔑された。
大佛次郎は「散歩について」という随筆で書いている。江戸時代には散歩など「はしたない」行為であった。ぶらぶら歩きは、遊び人か犬のすることでまともな大人のすることではなかった。身分制度の厳しい時代、そんな遊びは武士にも町人にも許されなかった。
それなら、いつ散歩は始まったのか。大佛次郎によれば「散歩は、やはり西洋人が来て教えた」。散歩は近代のものだった。散歩は精神的にも時間的にも余裕がないと出来ない。だから明治になって散歩を楽しむようになったのは学生や知識人、高等遊民と呼ばれる人たちだった。
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