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チベットへ贈る「政治学入門」 研究者が母語に翻訳して出版 中曽根元首相相談役の著書

出版された訳書を手にするチュイデンブンさん=東京都新宿区で2019年11月17日午後2時56分、藤田祐子撮影

 桐蔭横浜大非常勤講師でチベット圏出身の法学研究者、チュイデンブンさん(46)=東京都町田市=が、政治学者の矢部貞治(1902~67年)が51年に著した政治学の入門書をチベット語に翻訳、出版した。矢部は11月29日に死去した中曽根康弘元首相の相談役としても知られた。中国共産党の1党独裁下で学問や表現の自由が制限されている現状を踏まえ、「チベットの人々が政治学を基礎から学べる環境を作りたい。70年前の入門書にその価値がある」と話す。【藤田祐子】

 チュイデンブンさんは中国青海省のチベット圏出身で、2001年に留学で来日。南山大大学院、桐蔭横浜大大学院などで学んできた。その成果を故郷に還元したいと、母語で概説書の執筆を考えていた時に矢部の「政治学入門」と出合う。「政治運営の示唆に富み、思考の刺激になる。自分が書くより、これを翻訳したほうがいい」と感じたという。

 矢部は東京帝大で政治学を研究し、戦前は近衛文麿のブレーンを務めた。戦後は中曽根元首相の相談役としても知られ、生涯を通じて政治に携わった。

 同書は、矢部が終戦に伴い東京帝大を辞した時期、翼賛政治体制の失敗を踏まえて執筆した入門書。例えば、政治の実質を「国家内の対立と分化を公権力を背景にして統合し、法的に組織化された統一的な国家の意思と秩序を創造」するものと定義する。

 「全く古さを感じない」とチュイデンブンさん。「チベットは、近代国家の概念や国際政治の知識が浸透する前に中国共産党軍の侵攻を受けた。59年以降は1党独裁体制下で政治は国民から遠ざけられている。本質を学ぶスタートには、70年前の入門書はむしろ適している」

 時間の経過は別の面にも味方した。翻訳許可を得ようと出版元に連絡したところ、矢部の死去から17年で50年となり、著作権の保護期間が終了したことが判明した。チベット圏で出版すると、印税の仕組みが異なるうえ物価も違い、出…

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