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そこが聞きたい

天皇代替わりを振り返る=東京大教授・加藤陽子氏

 憲政史上初の天皇の生前退位=1=があった今年。平成の後半、上皇陛下の慰霊の旅や平和主義的な発言は、従来、天皇制に距離を置いた人にも支持された。一方、論壇の議論は、昭和から平成への時と比べ低調だったようだ。日本史に刻まれるだろうこの間の動きを、加藤陽子・東京大教授(59)に振り返ってもらった。【聞き手・鈴木英生、写真・長谷川直亮】

――今回の代替わりを巡る一連の社会的反響などをどう捉えますか?

 「公共」と「官僚制」の二つを鍵として考えたい。上皇(前天皇)の言動に「反安倍政権」的な支持が集まったことは、日本社会で「公共」が壊れている表れと捉えるべきだ。

 「桜を見る会」問題は、現政権の持つ特質を端的に示した。まず、許容しえないレベルの公私混同がある。次に、公務員自身による「公」の破壊だ。招待者名簿の破棄は、繰り返されてきた公文書の不開示や改ざんの延長線上にある。森友学園問題で、財務省は、改ざん後の決裁文書を国会、会計検査院、情報公開請求に対して臆面もなく提示した。本来は刑法の虚偽公文書作成の罪にも当たろうが、理財局長の停職3カ月の行政処分で幕引きとなった。三つ目に、種子法廃止や水道民営化、漁業権の私企業への開放など、全国の地域が育んできた知見や「公共財」が守られなくなっている。まさに、全方位で「公共」が毀損(きそん)されつつある。

――こうした危機に対して、天皇はいわば「公共」の象徴だと?

 たとえば幕末には、「私心」ある幕府を排斥する「公論重視」のシンボルとして天皇が浮かび上がった。以後も、明治期は富国強兵、戦後は平和国家といった「公」の目標へ国民をまとめる力が天皇シンボルにあった。近年も、2011年3月、福島第1原発の事故で政府が「メルトダウン」を「炉心溶融」と言い換えるなか、前天皇は「原子力発電所の状況が予断を許さぬ」と言い切った。「この人は危機のときに本当のことを言ってくれるはず」という人々の信頼に応えた。

――ただし、あえて言えば、天皇の存在には、民主主義と原理的に矛盾する面もあるのでは?

 たしかに、公共の守護者としての天皇像の裏面に「万世一系」の物語の影響はあるだろう。ただ、「万世一系」のプロジェクトを虚構だと理解したうえで、為政者はパッチワークを続けてきたのではないか。摂関家、武家政権、明治政府……。日本に住む人々の「総意」の代表として天皇を置く。このような意味で、特別な一人と民主主義は連結可能と見られてきた。即位まもない現天皇にこのプロジェクトを進める力があるかどうかは、難しい問いだ。前天皇は、昭和天皇が訪問できなかった沖縄を幾度も訪問し、ある意味、「父」の戦争責任に向き合おうとした。前天皇は責任に正対したことで戦後「天皇制」を完成させたとも言えよう。現在、多国籍の労働者が顕著に増大する日本で、「国民の総意」に立脚した天皇の地位も変容を迫られるはずだ。

――官僚制との絡みについては?

 ここで、これまでの話とは真逆の天皇像を指摘したい。政治学者の丸山真男の言葉だが、「自らの地位を非政治的に粉飾することによって最大の政治的機能を果たす」官僚制の「最頂点としての天皇」像がある。明治憲法と日本国憲法が制定される前後、官僚らは自らの理想とす…

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