毎日新聞
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手話を「言語」と定める「手話言語法」の法案が野党から先の国会に提出された。だが、議論されないまま継続審議となった。
法案が目指すのは、地域や学校などあらゆる場所で手話を使い、他者との意思疎通やさまざまな情報の入手が自由にできることで心豊かな生活を送れる社会だ。
国内で約35万人に上るといわれる聴覚障害者の権利が保障されるために、法律の制定が望ましい。
日本の手話は日本語とは異なる独自の文法を持つ。以前は「手まね」とさげすまれ、言語と認められていなかった。
ろう学校では手話を禁止し、口の形を読み取る「口話法」での教育が続いた。しかし戦後、口話法での精神的苦痛や教育の限界を訴える人たちによって、手話の復権を求める運動が国内外で起きた。
2006年に採択された国連の障害者権利条約で手話は正式に「言語」と明記された。日本では11年に改正された障害者基本法に「言語(手話を含む)」と記されている。
こうした中、鳥取県が手話を言語とする条例をつくったのを皮切りに、280を超える自治体が同様の条例を制定した。
これを受け、群馬県では群馬大が、聴覚障害者との意思疎通を仲介する手話通訳の資格を持つ教員養成を進めている。北海道石狩市は小中学生が手話を学ぶ機会を増やした。
しかし全国的には、手話の不得手なろう学校の教員は多い。手話を言語として教えるろう学校も少ない。職場では手話を当たり前に使える機会はほとんどない。
手話言語法の制定により、国全体で課題に取り組むべきだという声が広がるのは自然な流れだ。全ての地方議会も制定を求める意見書を可決している。
海外では、欧州を中心に法律で手話を言語と位置づけている国が多い。与野党が対決する法案ではあるまい。自民党も含めて超党派で制定を急ぐべきだ。
聴覚障害者から「手話は生きる力」という言葉を聞く。来年の東京五輪・パラリンピック開催を機に共生社会を前進させようとするのであれば、言語の多様性を大事にすることが、その一歩になるはずだ。
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