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「痴漢を容認する日本社会」女性を追い込む病理とルーツは 異色研究書の著者に聞く

「痴漢とはなにか」の著者、牧野雅子さん=東京都渋谷区で2019年11月22日午後3時13分、牧野宏美撮影

 「痴漢は犯罪です」。この言葉が駅のポスターに使われるようになって久しいが、痴漢被害はいっこうになくならず、日常化している。なぜなのか。痴漢はどのように伝えられ、認識されてきたのか。11月に刊行した「痴漢とはなにか――被害と冤罪(えんざい)をめぐる社会学」(エトセトラブックス)は、戦後から現在までの膨大な新聞や雑誌を読み解き、「痴漢を容認する社会」の問題を突きつける異色の研究書だ。著者でジェンダー研究者の牧野雅子さん(52)と痴漢の歴史をたどった。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】

 「多くの女性が被害に遭う一番身近な性暴力なのに、そもそも痴漢についてまとまった研究がない。誰かにやってほしいとずっと思っていました」。牧野さんは本を書いたきっかけをこう明かす。3年以上かけて国立国会図書館などで痴漢について書かれた新聞や雑誌を丹念に探し、分析を進めた。すると、驚くべき記事が次々に出てきたという。

 最初に電車内の痴漢問題に触れたとみられる記事は、1912年1月の新聞。東京の鉄道で婦人専用列車が運行されると報じたもので、当時男子生徒から女子生徒への痴漢行為が問題になっていたという。終戦直後から60年代にかけて既に痴漢被害は常態化し、雑誌で特集されるようになる。54年の婦人雑誌では「何らかのイタズラをされた経験をもたぬ婦人はないといえるほど」と指摘。62年の週刊誌は警視庁が痴漢対策に頭を痛めていると紹介し、67年には「被害の申告は被害者全体の100分の1程度」と伝えている。

 一方、この時期は男性作家らによる痴漢を肯定する論考も多く掲載されていた。「痴漢被害を仲間に話す女の人の心の中に、自慢のようなものがないといえるだろうか」として女性は一種の共犯者と断じたり、「痴漢的な素質のある方が、男性としてはまとも」「痴漢の対象にならないのは女の恥」などと主張したりしていた。牧野さんは「女性はいやだと言っているのに、男性側は痴漢はいいもので、女性は喜んでいるととらえていました」…

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牧野宏美

2001年入社。広島支局、大阪社会部、東京社会部などを経て19年5月から統合デジタル取材センター。広島では平和報道、社会部では経済事件や裁判などを担当した。障害者や貧困の問題にも関心がある。温泉とミニシアター系の映画が好き。

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