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地球の肺を守ろう~コンゴ熱帯雨林保護の最前線から(10)「温暖化の火薬庫」泥炭地の保全に取り組む=大仲幸作

JICA支援のもと、コンゴ政府が初めて主催した国家泥炭会議。100人を超える当地関係者から泥炭への高い関心が示された。=2019年7月(大仲幸作さん提供)

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 「泥炭地?まだまだ聞き馴れない言葉ですね。」いつもお世話になっている毎日新聞の記者の方からこのコメントを聞いて、私は今回のコラムで、この難題を取り上げることに決めました。

     泥炭地は枯死した植物が十分に分解されないまま泥状の炭の一種となって厚く堆積することで形成されます。その分布は沼地や湿地を中心に地球上の全陸域の3%ほどですが、全森林の2倍と言われる膨大な炭素を蓄積しています。そして、開発による乾燥化や火災など、ひとたびその管理を誤れば、その炭素が温室効果ガス(CO2やメタンなど)として長年にわたり大量に大気中に放出されるため「温暖化の火薬庫」とも呼ばれています。

     この泥炭地について、驚くべきニュースが世界を駆け巡ったのは数年前のこと。地球最後の秘境と呼ばれるコンゴ盆地において、何と世界最大の熱帯泥炭地帯が発見されたのです。

     そして、国際社会のコンゴ盆地保全への関心が一層の高まりを見せる中、木材業者による森林伐採、貧困民による農地開発から、果ては民間大手による石油採掘まで、この地域への開発圧力も、これまでにも増して高まりを見せています。

    イベントに先立ち、車座になって綿密に進行を確認する関係者=2019年12月(大仲幸作さん提供)

     こうした状況を看過すべきではないと考えた私は、早速、コンゴ民主共和国環境省のトイランベ次官にその問題意識をぶつけ、環境省は2019年7月、泥炭地への理解とその保全に向けた機運を高めるために、コンゴ政府として初めてとなる国家泥炭会議を開催しました。そして、その成果は、同会議から2カ月後にニューヨークにおいて開催された国連気候行動サミットの各国演説において、チセゲティ大統領が「泥炭地保全の重要性」に言及するという最高の形で実を結ぶことに繋がりました。

     こうした中、国際協力機構(JICA)も、最近の国際社会の関心を背景に、マドリードで開催されていた気候変動問題に関する国際会議(COP25)において、熱帯泥炭地をテーマとしたサイドイベント(公開討論会)を、国連機関などとの協力の下で開催しました。そして熱帯泥炭地の三大分布国であるインドネシア、ペルー、コンゴ民主共和国から、それぞれ登壇者を招きました。

     コンゴの登壇者選びを任された私は、当地の泥炭地研究の第一人者であり、また環境分野のノーベル賞と言われる環境ゴールドマン賞(注)の受賞歴もある当地キサンガニ大学のコーネル・エワンゴ博士にこの話をもっていきました。彼がJICA主催のCOPイベントに参加することで、発見後間もない世界最大の熱帯泥炭地帯の保全に日本が貢献できるきっかけを作ることができるかもしれないと考えたのです。

    討論会を無事終えて(コーネル・エワンゴ教授と筆者)。同教授は泥炭地の分布域の把握が最重要課題の一つであると強く訴えた=2019年12月(大仲幸作さん提供)

     イベントが終わると、私の期待通り、これまでに培った知見や技術を生かし、この分野で先駆的な取り組みを進めていきたいJICAほか日本側関係者とエワンゴ教授の間で、共同研究の可能性について、活発な意見交換が行われました。双方の関心事項は泥炭地のメカニズム解明のための継続的なモニタリングです。コンゴ盆地の泥炭地を保全するためには、その分布域を含め基礎的な情報がまだまだ不足しているのです。

     年明け、私はこの件をしっかりとフォローアップし、日本政府として初めてとなるであろうコンゴ盆地心臓部の熱帯泥炭地への視察をぜひ実現したいと考えています。(つづく)

    (注)1999年に米国の保険会社会長であったリチャード・ゴールドマン氏とその妻ローダ・ゴールドマンが創設した草の根の環境活動家を表彰する賞。受賞者は、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、小島しょ国、北米、中南米の6地域から選ばれる。


    大仲幸作(おおなか・こうさく)1999年に農林水産省入省。北海道森林管理局、在ケニア日本大使館、農水省国際経済課、マラウイ共和国環境省、林野庁海外林業協力室などを経て、2018年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザー(JICA専門家)としてコンゴ民主共和国環境省に勤務。

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