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自然災害が相次ぐ中、「災害弱者」と呼ばれる障害者への対応の見直しが迫られている。東日本大震災で障害者の死亡率が住民全体の死亡率の約2倍だったとの調査結果もある。
特に視覚障害者は情報を得るのが容易ではない。災害に備えようとしても、身近なリスクを把握することさえ難しい。災害の発生後は街が一変し、一人で動けない。一般の避難所での生活は戸惑うことばかりだ。
こうした問題を抱える視覚障害者に対して、きめ細かな情報を提供し、普段から備えをしてもらおうという試みが各地で始まっている。
ハザードマップの情報を触感などで伝えようとの取り組みが好例だ。NPO法人「日本災害救援ボランティアネットワーク」は、浸水部分を盛り上げて示したマップに障害者が触るワークショップを開いている。
広島県の「呉市視覚障害者協会」では朗読ボランティアがハザードマップの内容をCDに収録した。協会主催の勉強会では、障害者らが自宅近くの避難所の場所や、自宅が土砂災害警戒区域に入っているかを確かめた。災害時の避難を諦めていた障害者の防災意識が高まったという。
実際に避難に要する時間や、ルート上で障害物のある場所を普段から知っておくことも重要だ。岐阜市の障害者施設では毎年、視覚障害者と地域住民による防災運動会で、救援要請や搬送を一緒に体験している。
だが、課題はなお多い。NPO法人「兵庫障害者センター」は2017年度、県内の障害者や難病患者に豪雨災害における防災・避難意識のアンケートを実施した。視覚障害者の半数近くが「ハザードマップを知らない」と答えるなど、周知が進んでいない実態が浮き彫りになった。
自治体の中には、障害者一人一人の状況に合わせた災害時の個別避難計画が整っていないところもある。福祉避難所としての障害者施設の活用が進んでいない問題もある。
国は各自治体に、障害者への特段の配慮を求める通知を出しているが取り組みは地域で温度差がある。遅れている自治体の後押しが必要だ。
災害弱者に対する継続的な取り組みは、被災者全体への支援の充実につながる。「誰も取り残さない」ことを目指し、社会全体で災害への対応力を高めていきたい。