メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

社説

文化財の無断切り取り 保護体制を見直す教訓に

[PR]

 あってはならないことが放置されてきた。岩手県立博物館の上席専門学芸員による文化財の毀損(きそん)行為だ。

 県教育委員会はこの15年間に預かった金属製文化財約6000点の調査を進めている。長期にわたり多数の文化財が被害にあったとみられ、重要文化財2点が所有者である県に無断で切り取られていた。

 奥州藤原氏の拠点と推定される国の史跡、柳之御所(やなぎのごしょ)遺跡からの出土品だ。ほかに所有者の承諾の有無が不明な重要文化財14点の切り取りも判明した。

 県教委によると、切り取りによるサンプル採取は、保存処理方法の見極めや、学術情報収集が目的だったという。

 しかし、保存のための分析は非破壊が原則だ。先人の営みを伝える貴重な文化財を保存修復し、後世へ伝えるべき立場である。信じ難い背信行為だ。

 学芸員による無断切り取りは、もともと5年前に別の文化財で確認された。その際、1990年からサンプル採取を行っていたことを認めていた。

 それにもかかわらず、公表されなかった。それ以上調査をせず、処分も文書訓告にとどまっていた。

 県教委が調査対象を広げたのは、今年6月の毎日新聞報道がきっかけだ。隠蔽(いんぺい)と取られても仕方ない。

 すべてを徹底的に調べ、実態を明らかにする必要がある。県教委なども学芸員を同じ職場にとどめ、放置した責任を重く受け止めるべきだ。

 学芸員は金属の保存修復の専門家として知られる。ほかに専門家はおらず、1人に作業が集中していた。複数の目があれば、防ぐことができたのではないか。

 文化財の保存科学・修復の専門家は全国的に不足していると指摘されている。

 一方、文化財行政は大きく転換している。今年4月施行の改正文化財保護法は、保存と活用の両輪に大きくかじを切った。観光資源とすることが狙いだ。確かに、魅力を分かりやすく伝えることは、文化財の価値を知ってもらうことにつながる。

 しかし、展示など有効な活用も適切な保存修復があってこそだ。人材の育成は急務だ。保護がないがしろにされるようでは本末転倒だ。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 東京で新たに429人感染 2日連続で400人超 新型コロナ

  2. 御巣鷹墜落事故で救出、今は3児の母に 川上慶子さんの伯父が振り返る35年

  3. ORICON NEWS 石橋貴明、帝京高校9年ぶり優勝を祝福「みんなの心には永遠に負けない魂がある!」

  4. 「うがい薬発言で現場混乱」 大阪府歯科保険医協会が吉村知事に抗議

  5. コロナ患者また無断帰宅 大阪の療養ホテルから 府が警備員増員する直前

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです