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村上春樹をめぐるメモらんだむ

未発表作のサプライズ朗読 語り部は川上未映子さんと

朗読会で語り合う村上春樹さん(右)と川上未映子さん=東京都渋谷区の紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAで2019年12月17日(新潮社提供)

 ちょっと信じられないほど思いがけない体験だった。村上春樹さんの未発表の新作を、それも作家本人の朗読によって聴くことができたのだ。約450席の会場を埋めたファンの中には、1週早いクリスマスプレゼントのように感じた人もいたのではないか。そういえば、これまでの村上さん関連のイベントと比べても、その夜は外国人の姿が目立つように思われた。

 17日夜、東京の紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA(住所は渋谷区だが新宿駅南口近くにある)で行われた「冬のみみずく朗読会」でのことである。作家の川上未映子さんが聞き手を務めた村上さんのインタビュー集「みみずくは黄昏(たそがれ)に飛びたつ」の文庫版が刊行されたのを機に、新潮社が開催した。

 朗読したのは村上さんと川上さん。合間のトークには、ゲストとして写真家で編集者の都築響一さんも参加した。都築さんは以前から村上さんと親しく、エッセイストの吉本由美さんを加えた3人で国内外の秘境などを訪ねた旅行記も出版している。6月の「村上JAM」でもトークの相手として登壇した。

 村上さんが国内で朗読を披露すること自体、珍しい。朗読は2人の作家が交互に行ったが、村上さんは終始リラックスした様子で、ジョークも連発した。初めに川上さんが自作の長編小説「あこがれ」の一部、村上さんが短編「四月のある晴れた朝に100パーセントの女の子に出会うことについて」を読み、次に川上さんが最新長編「夏物語」の一部を朗読した。「夏物語」は女性による大阪弁の会話が特徴の一つだが、その語りを大阪出身の作家(歌手でも俳優でもある)が歌うように「演じて」みせた朗読は美しかった。

 自分の順番になり、村上さんは「僕も関西生まれなんで、関西弁で話してもいいんだけど、2人で話してると関西漫才みたいになるんで」と笑わせた。実はこの後、「僕は京都生まれとなってるけど、母が実家のある大阪の病院で産んだので、出生届は大阪生まれになっていた。京都に住んでたんで、京都生まれでいいんだけど」という、これ自体、聞き捨てならない「新事実」をも口にしたのだが、聴衆が一斉に沸き返ったのは次の言葉を聞いた時だった。

 「数週間前に書いたばかりの作品を読みます。未発表の短編です。恩を売るわけじゃないけど(笑い)」

 「年明けにどこかの雑誌に載る」という作品のタイトルは「品川猿の…

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大井浩一

1987年入社。東京学芸部編集委員。1996年から東京と大阪の学芸部で主に文芸・論壇を担当。村上春樹さんの取材は97年から続けている。著書に「批評の熱度 体験的吉本隆明論」(勁草書房)、共編書に「2100年へのパラダイム・シフト」(作品社)などがある。

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