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社説

福島原発の処理水問題 まずは不信の払拭からだ

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 東京電力福島第1原発の汚染処理水をどうするか。政府は、海または空中に放出する案を軸に検討することを、有識者の会合で提案した。

 福島原発では、炉心に大量の地下水が流れ込んでいる。62種類の放射性物質を取り除く装置で処理しているが、トリチウム(三重水素)だけは除去できない。処理水は毎日170キロリットルずつ増え、タンクにためられる。東電によると、2年半後には保管場所が不足するという。

 トリチウムは水素の一種で、雨や水道水、私たちの体内にも存在する。弱い放射線を出すが、濃度が低ければ影響は少ないとされる。

 今回の提案は、こうした性質を踏まえ、廃炉作業の支障となる処理水の問題を解決する狙いがある。だが、結論を急ぐ前に、地元の不信と向き合うことが先決だ。これまで、被災者の心情を逆なでするような言動が繰り返されてきたからだ。

 地元では今年に入り、漁業の本格操業再開に向けた取り組みが始まった。「常磐もの」と呼ばれる海産物で、福島の復興を目指す機運が高まっている。

 そんな中、原田義昭前環境相が「海洋放出しかない」と述べ、反発を招いた。事故直後に汚染水を海に放出し、国内外で風評被害が起きたことの反省が生かされていない。

 情報公開にも問題がある。東電は、処理水の8割にトリチウム以外の放射性物質が除去しきれず含まれていることを、積極的に公表して対処しなかった。こうした不誠実の積み重ねで不信は払拭(ふっしょく)されるどころか、深まっているといえる。

 政府は今回、地中や地上に長期保管する案は見送った。世界の原発でも運転時に発生するトリチウムを、基準値以下に薄めて放出している実績があり、保管は現実的でないという理屈だ。だが、地元には長期保管を望む声が強い。結論を押しつけるようなやり方ではなく、協議して合意点を探るべきではないか。

 有識者会合の役割は、処分に伴う課題を整理することで、最終的な決断は政府に委ねられる。

 世界にこれ以上の不安や不信を抱かせることなく廃炉作業を進めることは、事故を起こした東電と政府の責任だ。処理水を巡る問題への対応は、その試金石となる。

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