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なぜ、いま田嶋陽子なのか 幸せにするフェミニズム、「逃げ恥」「#KuToo」先取り

田嶋陽子さん(中央)を囲んで談笑する山内マリコさん(左)と柚木麻子さん=東京都新宿区で2019年12月16日、出水奈美撮影

 女性学のパイオニア、田嶋陽子さん(78)を再評価する動きが加速している。2019年10月には、1992年刊行の田嶋さんの代表作「愛という名の支配」(新潮文庫)が文庫化され、11月には雑誌「エトセトラ」(エトセトラブックス)で一冊まるごと「We LOVE 田嶋陽子!」の特集が組まれた。12月には田嶋さんを囲むトークイベントが東京都内で開かれたが、約100席のチケットは即日完売。「怒れるフェミニスト」は、約30年の時を経て、世代を超えて熱い支持を集めている。なぜ、いま田嶋陽子なのだろうか。【出水奈美】

 「フェミニズムだなんて言葉を使わなくてもいいから、自分が言いたいことを言える力を持たないとだめだよ。苦しいことを伝えるの。何かをサポートする『女』から、一人の人間になればいいんだよ」

 12月16日夜。田嶋さんはイベント「一夜限りのフェミナイト」に集まった女性と男性約100人を前に、日本の社会にこびりついた構造としての女性差別をひもときながら、熱く、やさしく語りかける。

 「皆さん、自分が子どもの時に望んだ人生を生きていますか。女の人生のパターンは、男社会が決めたのよ。男が女の人たちにこう生きてほしいと思っているの。男社会の枠の中で生きているだけなの」。田嶋さんの言葉は、聞く者の心を揺さぶる。

 田嶋さんとともに登壇したのは、80年生まれの作家、山内マリコさんと、81年生まれの作家、柚木麻子さん。山内さんは「ここは退屈迎えに来て」「あのこは貴族」など、柚木さんは「ナイルパーチの女子会」「マジカルグランマ」などの代表作がある人気作家である。田嶋さんよりも40歳近く若い2人が、今回「エトセトラ」特集号の責任編集を務めた。

 その巻頭言で、山内さんは「はじめに-田嶋陽子を救え!」と題して、「テレビによって作られてしまった、(略)誤解された一フェミニストをこの手で救いたいのだ。(略)藪(やぶ)だらけの荒野を開拓し、わたしたちがケガしないよう道を作ってくれた先達を、正しく評価しようと、扇動することが。この、日本でいちばん誤解されたフェミニストを救うことは、日本の女性全員を救うことになるんじゃないかと、わたしは思うのだ」と宣言している。

 山内さんはかつて、田嶋さんの著書「愛という名の支配」を読んで、「道行く女性に配ってまわりたい」と思うほど、心動かされたという。今回の文庫化にあたって、「わたしたちを幸せにするフェミニズムがここにある。」という帯文を寄せている。

 「愛という名の支配」は、田嶋さんの生い立ちや母から受けた抑圧をさらけ出しながら、苦しみの根本には日本社会の構造として女性差別があることを論じた「フェミニズム論」の先駆的書物である。この中には、いまの社会問題を予見するような記述もある。大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にも登場した、結婚は女性の家事労働を無償化する制度だという考え方も、「♯Ku Too」の「ハイヒールは女性抑圧のシンボル」「現代の纏足(てんそく)」だという考え方も登場する。

 山内さんから薦められて同書を読んだ柚木さんは、小学生のころに見た番組「ビートたけしのTVタックル」での田嶋さんの姿を思い出す。男性出演者の中で、たったひとり、女性の権利を訴える彼女の発言に「救われた」経験があるという。

 会場でマイクを握った山内さんと柚木さんも、日ごろ家庭の中で抱えている「もやもや」をぶつけた。

 子どもの保育園探しで「40園落ちた」という柚木さん。家事や育児について「家庭の中でも自分が動いたほうが早いから、結局、動いてしまう」と話すと、会場の女性たちが大きくうなずく。

 また、「皿洗いするの、どっち?目指せ、家庭内男女平等」(マガジンハウス)という著書もある山内さんは、「平成って、女性が社会に出たらどうなるのかという実験をして、そこで分かったのは、仕事も家事も育児も女性がやって三重苦みたいになるということ。男女平等教育を受けて、建前では男女平等だったけど、家庭のなかは旧時代のままだということ」とまとめた。

 田嶋さんが「愛という名の支配」を書いたのは約30年前。当時の心境をこう語る。

 「書かざるを得なかったの、苦しかったから。誰にも相談できなくて。自分の中から吐き出して書くことが、一種のセラピーだ…

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出水奈美

大阪学芸部では、音楽や宝塚歌劇団を担当。学生新聞編集部を経て、現在は東京学芸部。

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