秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡り、参入を図る中国企業側から現金などを受け取った疑いがある。
国会議員の逮捕は10年ぶりだ。現金授受があったとされる当時、秋元議員は副内閣相と副国土交通相を兼任し、IRを担当していた。在任中にIR実施法が成立している。
副大臣は役所の政務ナンバー2で政策の決定や遂行に権限を持つ。さまざまな働きかけを受ける可能性があり、癒着を疑われてはならない。
逮捕前に秋元議員は潔白を強調していた。しかし、こうした立場にありながら、特定の企業と関係を深めていたのは言語道断である。
秋元議員は国内でのカジノ解禁を目指す議員連盟のメンバーだった。中国企業が沖縄県でカジノ事業投資を発表した際、秋元議員が基調講演して、つながりを持ったという。
副内閣相就任後も中国の本社を訪問していた。カジノ誘致計画への投資先として浮上した北海道留寿都(るすつ)村を訪れてもいる。
カジノが生む大きな利益を狙い、外国の業者が参入を目指している。オンラインゲームやスポーツくじを手掛けるこの企業も日本法人を設立し、カジノに関わろうとしていた。
今回の事件は、カジノを取り巻く不透明な資金の流れと利権の存在を浮き彫りにした。闇の解明に向け、徹底した捜査が求められる。
IRは最大で3カ所設けられ、政府は2021年に自治体の申請を受け付ける予定だ。横浜市や大阪府・市などが名乗りを上げている。
一方で、住民の反対運動も起きている。解禁の議論当初から、反社会的勢力の関与や治安悪化、ギャンブル依存症の拡大が懸念されてきた。
誘致自治体は計画の再点検が求められる。業者との癒着を排除する体制づくりが、まず必要だろう。
安倍政権は訪日客増や地域振興を掲げ、成長戦略の目玉として、カジノ解禁を推し進めている。
菅義偉官房長官はカジノ整備について「着実に進めていきたい」と述べた。だが、元副内閣相が逮捕されたことを深刻に受け止めるべきだ。
長期政権による政治の緩みの表れではないか。一国会議員の逮捕と済ませられる問題ではない。