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サンデー毎日発

国公立大入試はどう変わる!? 英語民間試験「導入延期」で難関国立大に志望が戻るか

東京大

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京都大

 2021年度入試(21年4月入学)から、現行の大学入試センター試験が、大学入学共通テストに衣替えする。国公立大入試はどうなるのか。文部科学大臣の発言をきっかけにした英語民間試験の導入延期の影響も併せて検証した。

 英語民間試験や記述式問題の導入など、さまざまな改革が盛り込まれた大学入学共通テスト(共通テスト)は、現行のセンター試験に比べて平均点が下がるなど、国公立大志望者にとって大きな影響があると見られてきた。

 ところが、ここにきて大学入試改革はトーンダウンの気配だ。21年度入試がどうなるか見通しは不透明だが、その予測をする前に、まずは国公立大入試の現状を押さえておこう。

 19年度の国公立大入試の志願者は、8年ぶりに前年を上回った。センター試験の平均点アップにより、公立大の志願者が増えたことが要因で、国立大に限れば志願者数は前年を下回り、国立大人気が高まったわけではない。駿台教育研究所・進学情報事業部長の石原賢一さんが説明する。

 「専門を付した理科2科目を受験する理系の受験生の負担感が強く、理系学部を中心に国立大を回避する動きがあります。受験科目が変わらない限り、国立大の人気が高まることはないでしょう」

 確かに20年度入試でもこの流れは変わらず、9月に実施された第1回駿台・ベネッセマーク模試における国公立大の志望指数は96(前年を100とした時の指数)で、前年を4ポイント下回った。

 志望者減に加えて、浪人すると新テストを受けることになるという意識から、安全志向も強まっている。旧七帝大に東京工業大と一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学の動きを見ると、前期が96で後期が94。前後期合計は95で、前年同期と比較すると志望者の減少が顕著。大学個別に見ると、東大と大阪大が前年並みとなっている以外、他大学は軒並み志望者が減っている。

 筑波大や千葉大、金沢大、広島大、熊本大、大阪市立大など、準難関15大学の志望状況は、前期が94で後期が91。全日程合計では93となっている。大学名を首都大東京から伝統ある名称に戻すことが好感されて志望者が増えている東京都立大以外、全大学で減っている。筑波大や千葉大、東京外国語大、横浜国立大、金沢大、広島大、名古屋市立大などは大幅に志望者が減っている。大都市圏の大学が志望者を大きく減らしているのは、周りに有名私立大が多く、受験生の選択肢の幅が広いことが背景にある。

 難関10国立大と準難関大を比較すると、準難関大で志望者の減り方が大きい。この理由について、石原さんに聞いてみた。

 「難関大合格を目指している受験生のほうが、ブレずに志望を貫く傾向が強いということでしょう。準難関クラスの志望者は、入試改革が背後に迫り、安全志向が強いため、難関10国立大より指数が低くなるのだと思います」

高大接続改革によって、受験生の国公立大志向はどうなるのか

 では、共通テストが始まる21年度の国公立大入試はどのような状況が見込まれるのか。毎日新聞社と駿台予備学校、大学通信が全国の進学校を対象に実施した「高大接続改革アンケート」(左のグラフ参照)から見ていこう。

 アンケートの調査期間は今年9月20日〜10月4日。2368高校に送付し、1129高校から回答があった。質問内容は、「高大接続(大学入試)改革によって、受験生の国公立大志向はどうなるのか」で、難関大、準難関大、地元大の3カテゴリーについて聞いた。

 3カテゴリーともに、国公立大志向に「変化はない」とする回答が半数以上を占めているが、その割合は異なる。難関大が83.5%、準難関大が66.2%、地元大が54.2%と難易度が下がるほど、「変化はない」の割合が低くなっているのだ。一方、「変化はない」に次いで多かった「低くなる」は、難易度が下がるほど高くなり、難関大が8.9%、準難関大が19.0%、地元大が25.6%となっている。同様の傾向は「高くなる」でも見られ、難関大が5.4%、準難関大が12.0%、地元大が17.3%。

 17年に実施した調査と比較すると、難関大で国公立大志向が「高くなる」とする割合が14.1%から5.4%に下がる一方、「低くなる」は5.3%から8.9%にアップ。ブレる受験生が少ない難関大でも、安全志向の強まりを感じる結果となった。同様の傾向は準難関大でも見られ、「高くなる」が14.6%から12.0%に下がり、「低くなる」は15.8%から19.0%にアップ。地元大の数値は、17年と比べて大きな変化は見られなかった。

 回答全体の傾向としては、難易度が下がるほど、国公立大志向の振れ幅が大きいことが分かる。駿台の石原さんは言う。

 「志望校の難易度が下がるほど、英語民間試験や記述式問題の導入が前提とされた共通テストに敏感に反応する受験生が多いことが、振れ幅が大きくなる要因だと思います」

 調査期間との兼ね合いから、アンケートへの回答は、萩生田光一文科相の「身の丈発言」をきっかけに、英語民間試験の活用が延期された影響が反映されていない。従って、経済格差や地域格差など、英語民間試験が抱えていた問題点が、地元大の志望状況に影響を与えていたことを如実に示す調査結果となっている。

 事実、同アンケートでは共通テストの準備状況について聞いているが、「あまり評価できない(43.9%)」と「評価できない(38.4%)」を合わせると82.4%と圧倒的で、「評価できる(0.9%)」と「やや評価できる(9.6%)は合計10.5%にとどまった。教育現場の共通テストに対する不安感は非常に高かった。

千葉、横浜国立、神戸志望シフトで難化?

 英語民間試験については、北海道大や東北大が早くから活用見送りを表明し、出願資格にとどめた東大も、相応の英語力があることを証明できれば成績提出を不要とするなど、慎重な態度を取る大学が多かった。高校側も、全国高等学校長協会が延期を要請。大学、高校共に混乱を危惧する声が多かったが、萩生田文科相の“失言”まで、政府内には新テストを見直そうという動きはなかった。

 新テストの“目玉”のはずだった英語民間試験の活用が頓挫したことで、センター試験最終年となる20年度入試に影響はあるのか。駿台の石原さんは言う。

 「高校では、現行のセンター試験に戻ったという認識で、浪人しても不利にならないとの考えが中心的。英語民間試験がネックで、20年度中に決めたいと考えて志望レベルを下げていた受験生にとって、英語民間試験の活用延期は元の志望に戻すきっかけになる。そうすると、現在の安全志向がやや弱まる可能性があると思います」

 例えば、京大に行きたいが、安全志向から大阪大を考えていた受験生が本来の京大志望に戻るなど、難関大全体の志望者数は変わらなくても、その中で志望校のシフトが起きる可能性がある。

 同様の状況は準難関大でも考えられる。難関私立大に志望変更していた受験生が戻ると、千葉大や横浜国立大、神戸大など、志望者減が顕著な大都市圏の大学で受験生が増えるケースも考えられる。20年度入試で国立大全体の志願者が大幅に増える要素はないが、英語民間試験の延期で安全志向が弱まり、これまでの志望状況に変化の兆しが出てきたということだ。

 もちろん、21年度の国公立大入試の予測にも変化が起きそうだ。現時点で改めて高校にアンケートを取ると、国公立大志向が「低くなる」から「変化はない」に回答し直す進路指導教諭が増える可能性がある。難関大と準難関大で17年の調査を下回った「高くなる」とする回答の割合も戻るかもしれない。

 「難化が言われる共通テストですが、教科書の範囲内というのは変わらず、出題形式や問題量の増加などにより、平均点が下がるのです。難問、奇問が出るわけではなく、共通テスト自体が国公立大学志向に与える影響は少ない。21年度入試では、英語民間試験が国公立大の志望状況に大きく影響していたことは間違いなく、活用延期により、国公立大志向は現状維持になると見ています」(駿台の石原さん)

 英語民間試験の受験に向けて準備を進めてきた高校2年生にとっては迷惑な話だが、混乱が必至だった国公立大入試が元の鞘(さや)に収まり、安心する受験生が増えることは間違いなさそうだ。【大学通信・井沢 秀】

*週刊「サンデー毎日」2019年12月15日号より転載

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