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教育改革シンポジウム

第15回高大接続教育改革シンポ 迷走! 大学入試はどうなるのか 

シンポジウムは高校、大学関係者など多くの参加者が詰めかけた=東京都千代田区の毎日ホールで11月22日

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 大学入試改革の目玉だった「英語民間試験」の活用中止が決まった。一方、同じく懸念が示される「記述式問題」についても見直しの声は日に日に高まる。本当に実施できるのか、実施するための課題は何か、有識者が話し合った。

 2021年度入試(21年4月入学)から始まる大学入学共通テストでの英語民間試験の活用中止は、受験に必要な「共通ID」申し込み開始日である11月1日に発表された。経緯はともあれ“ひと安心”という人も多いだろう。

 半面、共通テストの国語と数学に導入される記述式問題にも、膨大な受験生の答案をどう公平に採点するのかなど、課題が指摘されている。駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社は共同で9~10月に全国の高校と大学に、共通テストなどについてアンケートを実施。その報告会も兼ねて、11月22日に東京都内で第15回「高大接続 教育改革シンポジウム」を開催した。その模様から、大学入試と高校教育のあるべき姿を探ってみたい。

 シンポジウムでは文部科学省の錦泰司・大学入試室長が講演。錦氏は記述式問題の課題は大きく二つあるとして、こう述べた。

 「『自己採点の一致率』と『採点の正確さ』に課題がある。試行調査では国語の一致率が6~7割で、志望校選択が困難となることが考えられる。正答の条件を分かりやすく周知するなどして高めていきたい。採点業務については準備事業を通じて改善を図ることとしている。結果は分析してお示ししたい」

 では、当事者である高校や大学はどう考えているのか。

大学入学共通テストの準備状況についてどう考えるか

 シンポジウムでは大学通信情報調査・編集部の井沢秀部長がアンケートの結果を報告した。高校・大学ともに、共通テストの準備状況を評価していないことが明らかになった(左のグラフ)。特に高校で否定的な意見が多い。懸念をよそに突き進み、結局、活用中止に至った英語民間試験の経緯を見れば、当然の回答だといえる。

 だが、記述式問題については、高校と大学で見解が分かれた。高校は問題内容に対して75.9%が否定的(回答が「評価できない」「あまり評価できない」)だが、大学は否定的回答が36.7%にとどまる。逆に肯定的(回答が「評価できる」「やや評価できる」)な反応は、大学が27.7%と高校の15.6%を上回った。

 評価できないとする理由としては、高校、大学ともに「自己採点が難しい」という意見が最も多かった。また、肯定的にとらえている大学は、記述式問題が「思考力・判断力・表現力を測れる」と考える傾向が強いが、高校ではそうした見方は少数だった。

 高校の67.2%、大学の23.0%が記述式問題の導入を「やめるべきだ」と回答している。17年の同様の調査では高校30.9%、大学4.5%だったので、導入見直しを望む声は増えていることが分かる。予定通り導入された場合でも、何らかの形で「合否判定に用いる」とする大学は、私立大では5割にとどまる(国公立大は8割近く)。また、私立大の1割は「合否判定に用いない」と回答した。

 大半の高校、そして大学も決して少なくない割合が否定的にとらえる中で、記述式問題を共通テストに導入する意義とは何なのか。

 シンポジウムで講演した大学入試センターの白井俊・試験・研究統括補佐官は「与えられた選択肢から選ぶだけでなく、自分の解答が他者に伝わる内容になっているかなど、自己(の答案)を客観的に見る『メタ認知』の力が求められている」とし、記述式問題で測れるこうした力は、大学入学後や社会に出てからも必須のスキルであると説明した。

作問や採点の制度を変えることも視野に

 続いて行われたパネルディスカッションでは、大学入試センターの白井氏に加え、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長、大学通信の安田賢治常務取締役が登壇。『毎日新聞』の中根正義編集委員の司会により、引き続き記述式問題について議論が交わされた。主な意見は以下の通り。

 「大学入試センターは専門的な観点からの批判に堪えうる良問を継続して作ることができる世界でも類を見ない組織。記述式でも良い問題を作れると思うが、採点については国から『50万人の答案を20日間で、民間事業者を活用して行う』という非常に厳しい条件を示されている。その条件の下で、現在、最大限の検討をしているところで、科学的な手法を取り入れながら何重ものプロセスを構築しようと事業者と協議を進めている。アルバイトが2人で採点して終わり、というやり方とは全く違うレベルのアプローチを考えている。ただ、答案を採点するのは機械ではなく生身の人間であり、50万件に上る答案を限られた期間で採点することが大変なチャレンジであるのは間違いない」(白井氏)

 「採点でトラブルが起きたら、責任問題になりかねない。大学入試センターは作問だけを担い、採点は各大学に任せるなど、今のシステムからの脱却についても考える必要がある」(石原氏)

 「SATやGCEAレベル(※)など海外のエッセーや記述式試験では、採点者の評価に対して受験生がチャレンジ(申し立て)できるような制度がある。そうした仕組みは一つの参考になる」(白井氏)

 「センター試験のマイナーチェンジでも記述式は入れられたはず。補助金をつけ、私立大にも記述式を促す方が早かった。仮に記述式の導入がなくなったとしても、生徒にとってその対策は必ず役立つことは間違いない」(安田氏)

 論理力や表現力を問える記述式問題の大切さに異を唱える関係者は少ない。課題の根本には、「全員に」「一律で」記述式を課すための技術的、制度的基盤が十分に整わないままに共通テストへの導入が進められていることがある。

 アンケート結果を見ると、ほとんどの高校が記述式問題への対策は通常の授業内容で十分だと考えていた。状況がどう変わるにせよ、1年後の受験生が不利益を被らないような体制で、共通テストがスタートすることを望むばかりだ。【構成/大学通信・松平信恭】


・SAT:米国の大学進学希望者を対象とした共通試験

・GCEAレベル:英国で大学入学資格として認められる検定試験。Aレベル(上級)及びASレベル(準上級)試験がある

*週刊「サンデー毎日」2019年12月29日号より転載

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