連載

余録

毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

連載一覧

余録

寝正月といえば…

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 寝正月といえば、今は帰省や旅行もせずに家でごろごろするお正月だ。しかし昔は元日に戸口を閉めて、家業を休むことだった。大みそかの古い忌(い)み籠(こ)もりの習俗の名残(なごり)のようで、商家はみな元日は休業した▲「商家にては二日より出る。元日は戸を開かず」とは天保(てんぽう)年間の「東都歳事記」の記述である。商家の大みそかは徹夜で掛け取りの攻防があり、2日からの初売りの準備もあったから元日が寝正月になるのも成り行きだったのだろう▲そんな古い禁忌(きんき)に由来する商店の元日休業は昭和の中ごろまで大方の店で受け継がれた。だが1970年代にコンビニエンスストアが年中無休営業を始め、その後は外食産業、スーパー、一部デパートにまで広がった元日営業である▲それが近年は一転、スーパー、外食チェーンでも元日休業が広がり、ついに大手コンビニも元日に休む実験を始めるという。主要小売り、外食約40社に対する小紙調査では、今度の元日には23社7600店が休業ないし一時休業する▲背景にあるのは、むろん人手不足や働き方改革だ。注目のコンビニではローソンのフランチャイズ加盟店102店、セブン―イレブンの直営店約50店がこの休業実験に加わるが、はてさて看板の年中無休営業の転機となるのかどうか▲年中無休は便利であるが、「のべつまくなし」はけなし言葉だ。年末年始の商いの喧噪(けんそう)に静かな元日をはさんで心機一転をもたらした昔の人だった。その知恵にゆっくりと思いをめぐらす元日があっていい。

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集