- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
幼稚園としては無認可だが、地域の幼児教育の一端を支えてきた「幼稚園類似施設」と呼ばれる施設が各地にある。文部科学省は来年度、こうした施設の利用に支援金を支給する事業を行う。
10月から始まった幼児教育・保育無償化の対象にはなっておらず、施設や利用者から不満の声が上がっていたためだ。
類似施設に定義はないが、園庭の広さなど幼稚園設置基準を満たせない小規模なところが多い。それでも、欧州の障害児教育がルーツだったり、自然体験が活動の中心だったりとそれぞれ特色があり、教育に賛同した親が子どもを通わせている。
自治体の中には既に支援しているところも多いが、国の視野からは外れた存在だった。来年度事業では、保護者の負担を子ども1人あたりで月額7000円程度軽減することを想定している。国として支援に乗り出したことは評価できる。
併せて来年度は、自治体に委託して、施設の実態や今後の支援のあり方に関する調査を行う。再来年度に開始を予定している本格的な支援制度につなげたい考えだ。
ただ、事業には課題も多い。
国の今年の調査では、自治体が支援の対象にしている施設は全国で200程度あった。対象外も多数あるはずだが、数も実態も分からない。
幼児教育の質を確保する上から、国による支援の対象にするには何らかの線引きがいる。文科省は「自治体が地域にとって重要と判断し、現に支援しているかどうか」を基準に支援の可否を決める方針だ。
だが、自治体によって取り組みには大きな温度差がある。施設を長年支えてきた市がある一方で、一度も訪問調査したことすらない市もある。その市に施設の必要性を正しく判断できるか懸念が残る。
線引きが自治体任せになれば、施設がどこに立地するかによって扱いに不公平が生じるおそれがある。
国と地方は今後、再来年度に向けて支援のあり方を協議する。
まず、支援の対象外だった施設も含めた実態把握が欠かせない。それを基に、国自身が支援基準を明確に示すべきだ。「全ての子どもの健やかな成長の支援」を国が掲げる以上、制度の穴をなくす責任がある。