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エンタメノート

能を楽しもう(3の前編)日本人の財産「高砂」若い人は謡って 山井綱雄さんに聞く

「高砂」について話す山井綱雄さん=国立能楽堂で、油井雅和撮影

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 お正月は、やっぱりおめでたい芸能を初めに見たい。元日朝のテレビでは、能楽では別格の曲「翁(おきな)」が放送されるので、録画してでもぜひ見ていただきたい。さらに、能楽でおめでたい曲といえば「高砂」がある。「高砂や この浦舟に 帆を上げて」で始まり、かつては「結婚披露宴で謡うおじさん」が必ずいたので、「ああ、あれか」という方もいるだろう。落語の「高砂や」でご存じの方もいるかもしれない。学校などでの能楽公演で、この「高砂」を歌ってもらおう、覚えてもらおうと奔走している、金春流(こんぱるりゅう)能楽師の山井綱雄さんに「高砂」についてうかがった。

 年末の国立能楽堂、女子高校生を前にした能楽公演をのぞかせてもらうと、生徒たちが紙を見ながら、大きな声で「高砂」を謡っていた。学校で練習をしてきたのだろう。実に見事なものだ。山井さんは、指導の前に、生徒に向けて「日本人とはなにか、自分で考えて感じてください」と話していた。

 「高砂は、今、こういう機会があると、若い人には絶対に歌ってほしいと思っています。きのうも小学校でワークショップをやってきました。私の地元・横浜の子たち、小学5年生に覚えてほしいと。正座できる子は正座で、できないこは立ったままで、やってもらいました」

 おそらく、今の「親」の世代はもちろん、「おじいちゃん、おばあちゃん」の世代も「高砂」を知る人は少なくなったに違いない。

 山井さんはこう説明する。

 「たとえば、海外旅行でアメリカに行くと、アメリカ人はカントリーを歌えます。イタリアの人はアリアが歌えます。では日本の人は? 何も語れない、歌えない、恥ずかしい思いをすることがあるわけです」

 すると、子供たちにはどう教えるのか。

 「君たちは違うんだ。高砂を覚えてほしい、一生の財産になるはずだから、歌ってごらん。世界中どこでも、あなた日本人ね、と通じるから。そう話して稽古(けいこ)すると、子供の目の色が変わるんですよ。最初は、なにやらされるのか、みたいな感じなだったのに」

 高砂とはどんな祝いの歌か、わかりやすく解説していただくと、「高砂は、船出をする場面を謡っていて、それは新しい門出につながる。勇気を持って船をこぎ出せば、幸せが待っているんだよ。だからみんなも謡いましょう」と説明しているという。

 「今、学習指導要領が改定されて、多くの教育現場で伝統的なものをやろうと確実に変わってきてます。戦後、敗戦国になって、日本がやってきたことはすべて間違いでした、となってしまった。もちろん、悪いこともあったけれど、日本古来からやってきたことで、よかったものもあったわけです。日本は戦後高度成長で、団塊ジュニアはその恩恵で幸せを享受できました。でも、残念ながら、日本が本来持っていたものをちょっとないがしろにして、アメリカ、ヨーロッパに学びましょうとなって、日本古来の文化が教育の現場でも取り入れられにくくなって、長く来てしまったんです」

 確かにそうだ。高砂の一節ぐらい謡えないと。落語の「高砂や」のように、そしてできれば少しは上手に。

 後半は幅広い活動ぶり、そして親友、デーモン閣下との共演などについてうかがいます。【油井雅和】

 やまい・つなお 能楽師(金春流シテ方)。1973年生まれ。横浜市出身。国学院大文学部卒。5歳で初舞台。文化庁文化交流使として、フランス、アメリカ、カナダで普及公演を開いた。能楽協会理事。

   ◇   ◇   ◇

 新春能狂言 金春流「“翁” 十二月往来 父尉 延命冠者」 1月1日午前6時35分、Eテレ。https://www4.nhk.or.jp/P4255/

 金春円満井会特別公演 2月11日(火・祝)午後1時、東京・千駄ケ谷の国立能楽堂。詳しくは公式ホームページ(https://www.tsunao.net/)。

 新春落語研究会 1月1日午前7時、BS-TBS。柳家三三(さんざ)さんが「高砂や」を演じる。

油井雅和

東京生まれ。東京、大阪で、大衆芸能、笑芸、放送などを取材し、芸術選奨選考審査員、文化庁芸術祭審査委員などを務めた。沖縄好きで学生時代から通い、泡盛は糖質ゼロなので大好き。

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