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(文春新書・880円)
子が加害者にならないための心得
本書の帯には、黒をバックに「『嫌いな親』を介護できるか?」との文字が赤と白で大きく躍る。強烈なのは惹句(じゃっく)だけでなく、タイトルからしてそうだ。評者の妄想だが、毎日新聞読者層が地域の書店でレジに置くには勇気のいる本かもしれない。
だが本書は、「マクベス」の予言ではないが、女から生まれた者(ここでは自然分娩(ぶんべん)も帝王切開も含む)、つまり全ての人に関係し、苦悩や哀楽抜きに語れぬ事柄をきっちり書いた実に良い本なのだ。その事柄とは、親による子の養育問題であり、子による親の介護問題である。
親子であっても個としては別人格の相手に対し、その生命と心身の二つながら生殺与奪の権を握れる瞬間。それが養育・介護の時間であり、負の方向に振り切れた時、それは虐待・放棄の時間に転化する。著者は、長年にわたって児童虐待から介護ネグレクトまでのさまざまな家族の問題を専門に扱ってきた信頼すべき書き手である。
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