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たたなづく

人類の意識の始まりを体感=河瀬直美

12月22日冬至の日に、小田原文化財団江之浦測候所にて=河瀬直美さん提供

 2019年12月22日冬至。一年で一番夜の長い日。ここからゆっくりゆっくり春分の日に向かってまた太陽は光を届けてくれる。

 この日はさまざまなご縁をいただき、写真家であり、美術作家でもある杉本博司さんの意向や趣旨が存分に詰まった小田原文化財団江之浦測候所へ、日の出前に出かけた。到着した頃は、うっすらと漆黒の闇の空が、青いそれに移り変わろうとするところだった。相模湾を望む測候所。ここから先に何が待ち受けているのか。はやる気持ちを抑えながら、一歩一歩、歩を進める。冬至の朝、ほんの数分だけ測候所の地下トンネルに陽光が差し込む姿に出逢(であ)える「冬至光遥拝隧道(ようはいずいどう)」。待合棟で注意点などを告げられ、おのおのがその「場」へ向かう。冬至は一年の終点であり起点でもある、と杉本さんは言う。それは「死」と「生」の間、瞬間でもあるのだろう。人類は日が昇り、季節が巡ることを意識したことで、それを記憶した。それは人の最も古い記憶であり、現代人はすっかり忘れてしまったものかもしれない。だとすれば、その意識をよみがえらせる行いのためにこの測候所は構想されたのだ。

 杉本さんは手につえのような測候できる棒を持って施設内を歩く。いつでもどこでも何かしらの測候をし、アイデアを膨らませ、敷地内に次々と「場」をしつらえてゆく。アートとは「人間の意識の最先端」を示すものであるという考えかた。けれど近年、人類の成長とともに、さまざまなものが臨界点に達し、アートの行き場さえ見失ってしまったように見える。

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