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特集ワイド

1970年への旅 三島が予見した「終末」 現代人が直面する「破滅」見えていた…

東京・南馬込の自宅でインタビューに応じる三島由紀夫。この時期、創作と同時に、「楯の会」の活動を本格化させて「死」の準備を始めていた=1968年12月撮影

 「あの日」から今年で50年になる。1970年11月25日、三島由紀夫(享年45)が陸上自衛隊市ケ谷駐屯地に乱入、自衛隊員に「檄(げき)」を飛ばした直後に割腹自決した事件は衝撃を与えた。今も内外で業績がしのばれ、その言動は論議を呼ぶ。なぜ国の行く末を憂えて逝ったのか。作家が予見した「終末」の意味を考える。

 <僕が死んで五十年か百年たつと、ああ、わかったという人がいるかもしれない。それで構わない>。70年2月19日、自伝的評論「太陽と鉄」を英訳した故ジョン・ベスター氏との対談で、自身の行動について問われた作家は、誰に語ることなく「死」を周到に準備していた。68年10月、民族派の右翼学生らを集めて創設した「楯(たて)の会」の活動に全力投球しつつ、65年6月から書き始めた「豊饒(ほうじょう)の海」4部作も第3巻「暁の寺」の最終回を順調に脱稿。ベスター氏と対談した翌2月20日に、文芸誌「新潮」の担当編集者だった小島喜久江さん(91)に原稿を渡している。

 小島さんといえば、三島の年譜に度々名前が出てくる伝説の文芸編集者である。5年前の6月、私は個人的に彼女と面会する幸運を得た。学生時代から、毎日新聞に「小島千加子」のペンネームで文芸編集一筋の40年間をつづった連載「作家の風景」の熱心な読者であり、川端康成、檀一雄ら大家の素顔を知りたいと思った。なかでも最終巻「天人五衰(てんにんごすい)」の完結原稿を「あの日」に受け取ったことを直接聞きたいと願ったのだった。

 「『豊饒の海』は輪廻(りんね)転生を主題に、『死んだ人間が次々と生き返ってくる小説になる』と内々に聞いていたの。『自分の総(すべ)てを注ぐ』と語っていた畢生(ひっせい)の大作の結末をどうするかで悩んでおられた。先生が『毎日』に寄せた『豊饒の海』に関する文章を読んでいたし、第2巻『奔馬(ほんば)』を書くために切腹の作法を知りたがったこともあった。ちょうどその頃、私の母が亡くなって、死の暗示に対するアンテナが働かなくなっていたと思う」と小島さん。くだんの寄稿で三島は<この小説を完結させるのが怖い。一つはそれが半ば私の人生になってしまったからであり、一つは、この小説の結論が怖いのである>(「『豊饒の海』について」69年2月26日付)と記した。あきらかに自己破滅を予言していた。

 「原稿を受け取りに毎月お宅へ行くのも、主人公・本多繁邦の言葉にあるように死が段々と近づいてくるわけです。連載が進んだ夏以降、気が重くなってきて、ある日、完結後の予定をお聞きした時…

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