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令和のジャーナリズム同時代史

(1)はじめに 岐路に立たされた令和のジャーナリズム

煙を上げる「京都アニメーション」第1スタジオ=京都市伏見区で2019年7月18日

 昨年1月から4月まで、平成の最後に15回にわたって「平成の事件ジャーナリズム史」を連載しました。平成はジャーナリズムの姿が劇的に変わった時代でした。記者が執筆する姿をみても、手書きの原稿がワープロ通信、パソコン通信へと変わり、写真もフィルム現像からデジタルへ、そして、スマートフォンが登場し、動画発信も当たり前になりました。そんな平成のジャーナリズムの変遷を事件を通してたどろうとしたのが、この連載でした。おかげさまで約50万人のユーザーに読んでもらうことができました。令和に入っても、ジャーナリズムの変化は止まりません。さらに大きく加速さえしています。今回は、令和に起きたジャーナリズムをめぐるさまざまな事象について、平成や昭和の教訓を振り返りながら、現状の課題と、あるべきジャーナリズムの姿を展望したいと思います。原則毎週日曜日に発信していきます。

 令和に起きた事件で、私が最も衝撃を受けたのは昨年7月18日に「京都アニメーション」第1スタジオで起きた放火殺人事件でした。アニメーターら36人が死亡、33人が重軽傷を負うという犯罪史上最悪と言える事件です。私が受けた衝撃は、その被害の大きさと悲惨さだけではありません、被害者の実名公表をめぐって、これまでにはなかった警察の対応がありました。遺族の了承がとれないことを理由に警察の公表が先送りされました。被害者のすべての実名が警察から明らかにされたのは、事件から1カ月以上がたった8月27日でした。そして、その実名を報道することをめぐって、激しいメディア批判が起きたのです。

 事件報道において、被害者の実名を報じることは、これまでは議論の余地のない自明のことでした。「誰が犠牲になったのか」は公共の最大の関心事であり、後世に伝えるべき歴史の記録だとする認識が、広く社会に共有されていたと思います。「氏名を公表されたくないのに」という問いかけには、「たとえば飛行機事故が起きた時、家族や知人が乗っていたかどうかがすぐに分からない社会でいいのですか」「実名で報じることで事件事故の悲しみがより深く人々の心に刻まれ、再発の抑止力や教訓にもなるはずです」と返せば、ほとんどの人が納得してくれました。少なくとも、被害者の実名を報じたメディアに批判が相次ぐといった事態は想定できませんでした。昭和の終盤に新聞記者になり、平成を報道の現場で過ごしてきた私のよう…

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小川一

1958年生まれ。1981年に毎日新聞社入社。社会部で事件取材を長く担当。社会部長、編集編成局長、取締役・編集編成担当などを経て18年6月から毎日新聞グループホールディングス取締役。

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