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余録

人類学者の岩田慶治は著書「カミの人類学」でこんな話を書いている…

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 人類学者の岩田慶治(いわた・けいじ)は著書「カミの人類学」でこんな話を書いている。――「鳥さん、鳥さん、あなたの魂は何」「え、え、私の魂、それは空よ」。今度は雲一つない空、果てしなく広がる空を仰いで聞く▲「空さん、空さん、あなたの身体はどんなかたち」「なに、わしの身体、そう、それは鳥だな」――。空=魂といえば、英語の「soul(魂)」の語源が「海」に由来するのを思い出した。海から来て、海に帰るのが魂ということなのか▲永遠に連なるものが、限りある命に宿ってそれを他とは違うかけがえない存在にする魂である。あの事件で心を針で突かれたような痛みが今も残るのは、障害者の魂の存在を否定する悪意がどう生まれたのか、答えを出せないからだ▲4年前、相模原市の施設で障害者ら45人を殺傷したとして起訴された植松聖(うえまつ・さとし)被告の公判が始まった。障害者の抹殺(まっさつ)を公言していた被告は起訴内容を認めて謝罪を口にした後に暴れ出し、休廷後の公判は被告不在の冒頭陳述が行われた▲心痛むのはこの裁判で大半の被害者が「甲A」などの記号で呼ばれることだ。遺族の要望というが、種々の事情のある遺族を責めるのではない。遺族への心ない中傷などで被害者の魂の存在の証しである名前も明かせぬ現状が悲しい▲神仏が無力で虐げられた者をこそ慈しむのは魂の救済を求める宗教がこぞって掲げるビジョンである。力や富、効率や才知が支配する世にあって、聖なるものへの無感覚が被告だけのものではないのを恐れる。

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