米イラン緊張 日本の考古学研究者や人道支援関係者に悪影響の懸念強まる
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米国とイランの間でイラクを舞台に攻撃の応酬があったことで、中東で活動する日本の考古学研究者や人道支援関係者からも悪影響の懸念が強まっている。トランプ米大統領は8日の声明で当面は軍事対応の激化は避ける意向を示唆したが対イラン経済制裁の即時強化に言及しており、先行きに対する関係者の不安は根強い。【和田浩明/統合デジタル取材センター】
経済制裁が発掘、研究に影響「論文コピーを送って」
東京文化財研究所文化遺産国際協力センターの安倍雅史研究員(43)は2018年からイラン東部南ホラサン州で約5000年前のカクレブ遺跡の発掘に取り組んでいる。イラン国立博物館のホセイン・アジジ博士との共同プロジェクトで、「イランでどのように文明が形成されたかを調べている」(安倍さん)。
現在、ペルシャ湾岸のバーレーンで別の遺跡の発掘を行っている安倍さんは、通信アプリでの取材に「もし戦闘が本格化すれば調査は打ち切りになると思う」と懸念を示した。
今回の米・イラン間での紛争による直接的な影響はないというが、協力しているイラン側の考古学研究者らはトランプ政権下で強化された米国の経済制裁の影響を受けているという。「制裁で考古学研究の予算が大幅に削減され、イラン人研究者による大規模発掘はほとんど行われていない」と安倍さん。テヘラン大学考古学部も予算不足で「必要最低限の基本文献が買えていないようだ」といい、大学院生から論文をコピーして送ってほしい、との要請がメールでよく寄せられるという。
「文化施設攻撃辞さず」トランプ発言に憤り 交流継続の姿勢
19年は日本とイランの外交関係樹立90周年で考古学分野で今年も関連の行事が予定されている。安倍さんは米イラン関係の悪化が影響を与えないか心配している。
トランプ氏は4日の段階で「イランの文化施設」への攻撃を辞さない姿勢も示した。安倍さんは「文化遺産の破壊は、民族の歴史、誇り、また地域コミュニティーの破壊をもたらす文化浄化という犯罪行為であり、トランプ氏の発言は一国のリーダーの発言とは思えない」と憤りを隠さない。
それでも、「事態が収束すれば今年も予定しているイランでの発掘作業は行いたい」と前向きだ。所属する東京文化財研究所はイラン国立博物館を対象に、大気汚染のひどいテヘランで金属製品の腐食を避けるなど展示・収蔵環境の改善への支援も行っている。安倍さんは「こう…
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