連載

あしたに、ちゃれんじ

関西各地で芽生えている市民の新しい活動を紹介します。

連載一覧

あしたに、ちゃれんじ

大阪のイタリア野菜 地産地消文化、懸け橋に=中川悠 /大阪

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
「故郷であるペスカーラの家族が懐かしくなりますね」。大阪市内産のイタリア野菜を両手に抱える総領事、ルイージ・ディオダーティさん=大阪市北区の在大阪イタリア総領事館で、中川悠さん撮影 拡大
「故郷であるペスカーラの家族が懐かしくなりますね」。大阪市内産のイタリア野菜を両手に抱える総領事、ルイージ・ディオダーティさん=大阪市北区の在大阪イタリア総領事館で、中川悠さん撮影

 「フィノッキオ、大好き!」「大阪のイタリア野菜、おいしいです!」

 大阪・中之島の在大阪イタリア総領事館に、大阪市平野区の朝採れ野菜を両手いっぱいに抱えた農家の男性が訪ねてきた。「大阪で育ったイタリア野菜をぜひ味見してもらいたい」。農家の熱い気持ちに応えてくれたのは、総領事であるルイージ・ディオダーティさん(55)。机の上には、ワインレッドと白のコントラストが美しいラディッキオ、トスカーナ地方原産といわれているケールの仲間、カーボロネロなど聞きなれない名前の野菜が置かれている。

 昨年、大阪市内の農家を中心としてイタリア野菜栽培の研究会が立ち上がった。収穫量が地方に比べて多くない市内農業の強みは、都市部の飲食店に安価な輸送コストでより新鮮な野菜を届けられること。「国内のイタリア料理店は、イタリアから野菜を空輸で仕入れているところが多いらしい」。それならば、大阪のイタリア野菜を新鮮なまま届けることができるのではないか。JA大阪市や大阪市も協力し、動き出した。

 2017年12月に来日したディオダーティさんは、まず日本で食べるイタリア料理のレベルの高さに驚いた。イタリアに渡って修業をしている日本人シェフも多い。料理を作る人はもちろん、食材を育てる人など日本人が持つ勤勉さにも心を打たれた。

 「地元で育った野菜を食べることが健康に一番いい」。これはディオダーティさんの母の言葉。イタリアの東側、人口20万人のペスカーラという漁師町で生まれ育った彼の両祖父母は、ともに農業をしていた。父方の祖父は広いオリーブ畑でオリーブ油を作り、母方の祖父は鉄道員でありながらブドウ畑を持ち、ワイン作りを楽しんだ。

 スイーツやラザニアなど料理が得意な母の口癖は「とにかく、家で作った料理を食べなさい」。息子たちに健康に育ってほしいと、地産地消の大切さを幼い頃から伝え続けてきた。日本もイタリアと同じく、地方ごとの食材が豊かで料理も奥深い。土地の文化を大切にする両国の共通項はとても多い。

 「母国の文化を大切にする日本の皆さんに、もっとイタリア料理や食文化の豊かさを知ってもらいたい」。イタリア大使館や領事館では毎年11月の3週目に、各地のイタリア料理店と連携するキャンペーン「世界イタリア料理週間」を開催している。ディオダーティさんは今年新しく、夕食前におつまみを食べながら軽く一杯飲んで過ごす「アペリティーボ」というイタリアならではの習慣を知ってもらう取り組みにも力を注いだ。

 「大阪で育った野菜も、母国の野菜もどちらも大好き!」。イタリア人らしい陽気な笑顔で話すディオダーティさん。何度も「どちらか一方だけが栄えるのではなく、豊かな文化を持つ二つの国が未来に向けて手を取ることが大切」と語った。「日本料理にイタリアワインが合うというのが、日本に来た僕の一番の大発見。だからこそ大阪のイタリア野菜もきっと、どちらの国の人にも愛されるはず」。今までで一番のチャーミングな笑顔で大阪の農業にエールを送った。

 始まったばかりの大阪市内でのイタリア野菜づくり。世界の懸け橋になる日は、そう遠くないはずだ。<次回は2月7日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集