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東京へ ともに歩む

毎日新聞

高く跳べ! 早大の男子チアリーディングチーム「SHOCKERS」の安藤亮太代表(中央)、中馬(ちゅうまん)一樹副代表(右)、足立開練習長=東京都千代田区で2019年12月22日、吉田航太撮影

東京・わたし

男子チア いつかオリンピックでも 早稲田大学SHOCKERS

 スポーツの応援に起源を持つチアリーディングを男子だけで披露するチーム「早稲田大学SHOCKERS(ショッカーズ)」。高さ6メートル近くまで人を放り上げるなど、筋力を生かした迫力ある演技でイベントを盛り上げている。秋に代替わりし、新チームが発足した。代表で社会科学部の安藤亮太さん(21)、副代表で基幹理工学部の中馬(ちゅうまん)一樹さん(20)、練習長で文化構想学部の足立開(かい)さん(20)に聞いた。【構成・本橋由紀】

     ――チアリーディングをやっている立場から東京2020大会について考えていることはありますか?

     ◆安藤 オリンピックは「スポーツの祭典」ですが、スポーツの醍醐味(だいごみ)はみんなでひとつのことを作りあげていくことなんだとあらためてこのチアリーディングを通して感じています。チアリーディングは応援するスポーツとして始めてみたものの、応援されるスポーツでもあり両方の面を持っている、特殊な面白い深みがあるスポーツです。チアリーディングをやることは結果的に全スポーツを応援することにつながると思っています。

     ◆中馬 チアリーディングというスポーツ、競技は自分も初めてみること、初めて知ることが多いです。日本ではマイナースポーツだと感じることがすごく多いんですけれど、本場のアメリカに目を向けてみるとチアリーディングがメジャースポーツになっているので、日本の方々にもチアリーディングというスポーツを多くの人がを知るきっかけにオリンピック・パラリンピックがなればいいです。応援するスポーツなので、どちらかといえば、サブの立場にまわることが多いですが、競技としても成立して、日本でもいろいろ大会が行われています。この競技の知名度や人気がオリンピック、パラリンピックをきっかけに出てくればいいと考えています。

     ――ゆくゆくはオリンピック種目にということでしょうか?

     ◆中馬 先輩には「チアリーディングをオリンピック競技に」とオーストラリアにチアを学びに留学されている人もいるので、そうなったら、やっている身としてはうれしいです。

     ◆足立 ショッカーズという団体は東京都内でいろいろ活動させていただいているんですけれど、まだまだオリンピックのような大きい規模とは縁遠いです。学生団体だし、サークルなので、なかなか大舞台にも縁がない。けれど、オリンピックの観点で考えるとチアリーディングは競技性もある。スコアリングのシステムがあって、複数の審査員が評価する、フィギュアスケートなどに似ています。近年、オリンピックでもマイナースポーツが注目され始めているので、そういうところでも目を向けてもらえるよう、僕らが中心に発信していけたらいいなと思っています。

     ――どのようなところが面白いのでしょうか?

     ◆足立 チアリーディングは、ダンスや、スタンツという組み体操みたいに人の上に人が乗って、いかにきれいな演技をするかが見られます。トスと呼ばれる人がジャンプするワザがあり、空中でアクロバットするとか。チアリーディングと一口に言っても、いろんな分野で競技として見られて採点されるので、いろいろな面で楽しめるし、競い合えるのが楽しいところだと思います。

     ――男子チアは少ないようですね?

     ◆中馬 日本では、ぼくらと、明治大アンカーズ、名古屋大と南山大などのインカレチーム・名古屋スパイダーズ、首都大学東京のマクソンズ、駒沢大メイツとショッカーズOBがつくったキッズチームの六つです。一番歴史が古いのがショッカーズです。世界的にも少なくて、アメリカの大会でも男子単独チームはいません。

     ――男子が大会に出場する場合は、女子チームと戦うのですか?

     ◆足立 例年アメリカに行っていますが、エキシビションという部門で出場させていただいています。女子だけ、男女混合の部門があり、ぼくらはエキシビションでショッカーズ男子オールボーイズという枠でやらせてもらっています。

     日本ではOBが立ち上げた組織が男子チアリーディングだけで戦う大会を行っています。OBチームなども出て12チームほどで競技をします。

     ――みなさんはいろいろなスポーツ経験があると聞きました。これまでどのようなことをやってきたのでしょうか?

     ◆安藤 自分はバスケットボールをやってきました。

     ◆中馬 幼稚園のころからサッカー一本でした。

     ◆足立 ぼくは小学校から器械体操をやっていました。

     ――入部すると「ショカネーム」というのをつけられると聞きました。それはどのようなものでしょうか?あだなのようなものですか?

     ◆中馬 仮入部が1カ月ほどあり、5月に本入部します。その時に新入生が先輩たちの前に並ばされて、本名、出身校、経験してきたスポーツ、趣味、好きな食べ物だとかを先輩の前で言わされて、あとは先輩たちの連想ゲームで「おまえは何々」と言われたのを名乗ります。僕は餃子、チャオズです。名字がちゅうまんなので、中華料理で、漢字にしようと。回鍋肉(ホイコウロー)とか青椒肉絲(チンジャオロースー)も候補でしたが長いから。チャオズです。

     ◆安藤 網戸を壊した先輩と以前から関わりがあって、網戸です。

     ◆足立 体操に限らず滑り止めの粉として使われる炭酸マグネシウムが使われます。体操の技名かダサイ道具の名前から絞られて、炭酸マグネシウムでタンマにしようと。本当に連想ゲームです。

     ◆中馬 早稲田の付属出身だと、過去の先輩にならい、野菜や漢数字が入ります。

     ◆安藤 お掃除系もあります。モップ、ダスキンとか、引退された先輩にはたわしさんやダイソンさんもいました。

     ――なぜショカネームをつけるのですか

     ◆足立 ぼくらはすごく長い時間、同じ時間を共有するので、本名で呼び合うよりあだ名で呼ぶ方がチームとしても打ち解けられます。そういう雰囲気づくりが結果的にも演技や練習作りにも表れてきます。初期の時代の方針が受け継がれています。

     ◆安藤 信頼の上で成り立つスポーツで、上に跳んでいる人を下の人がキャッチしてくれるという絶対的な信頼があってできるワザが多いので、上下間はできるだけフランクにしようという意味もあります。

     ◆中馬 仲間内ではショカネームを先に覚えてから本名を知ります。

     ――練習はどのくらいやるのでしょうか?週に何回くらいですか?

    「SHOCKERS」の安藤亮太代表は「早稲田大でしかできないことをやりたい」と入部した=東京都千代田区で2019年12月22日、吉田航太撮影

     ◆足立 練習は午後6時から10時、週4回は絶対やります。練習場所は公共の体育館などを予約して借りています。大学の体育館は部活動が使っているのでサークルはほとんど使えません。

     ――オリンピックやパラリンピックの準備で体育館を取るのが大変でしょう?

     ◆安藤 練習場問題に関しては年明けからますます厳しくなります。

     ◆足立 つてをたどって、OBなどにも、いろいろ連絡させていただいて体育館や倉庫、空き部屋みたいなものを探してもらっています。体育館といっても高さが必要で、条件にあう場所がなかなか見つかりません。6、7メートルは人が跳ぶので、天井はそれ以上必要です。

     ◆中馬 最近あったイベントは、ホテルの会場で天井が5メートルくらいでした。本当は4人でトップを跳ばすんですが、それだとトップが天井にぶつかっちゃうので、3人で跳ばしたり、ちょっとワザを変えたりしました。保育園のクリスマスパーティーにサプライズゲストとして呼んでいただきました。インカレバスケの決勝戦にも行きました。全然分野が違うイベントに、依頼をいただいて、予定をやりくりして出て、出演料をいただいています。

     チームが設定する単独公演は、お客様にお金を払って来てもらいます。そういうイベントの報酬は全部ショッカーズの会計に入って、そこから備品を買ったり、コーチの謝礼を払ったり、という形でやりくりをしています。月額の会費などはありません。

     ――イベント報酬だけで回せるのですか?

     ◆足立 単独公演で収入が出るように一応なんとかという感じです。単独公演は年に2回、8月初旬と9月末か10月に開催し、11月に引退します。

     ――単独公演では何種類くらいの演技をするのでしょうか?

     ◆中馬 12から14くらいです。

     ◆足立 公演に向けて用意する構成(演技)が違い、披露するものも違います。とっかえひっかえで。テッパン演技をアレンジしてやっています。

     ◆中馬 テッパン演技は、人を跳ばすのと、持ち上げるのと、ダンス。チアリーディングはモーションといって、ただのダンスではなく、手をそろえることなども要素としてあります。そういうチアリーディングの基本的な要素を詰め込んでいる。初期の頃から続いていて、伝統の引き継がれているものです。

     ――スポーツ経験がない、帰宅部出身の方もいるそうですね?

     ◆足立 本当に今までスポーツを何もやっていなかった子がTOPをやってます。スタートラインが一緒で、触れたことがないので、努力次第で成長します。

     ――大学スポーツの応援に行く場合はどのような構成になりますか?

     ◆安藤 部活やスポーツ系の試合だと大体ハーフタイムなので、時間が10分くらいで入りとハケを含めるので、テッパン演技ひとつくらいしかできません。

     ◆中馬 各大学のクラブは応援部や女の子のチアにお願いしていますが、ぼくらも早稲田大の試合の応援にたくさん行っています。早慶戦などはぼくらも盛り上がります。野球は応援部とは別に五回裏が終わったあと式台でやります。

     ラグビー・ワールドカップ(W杯)の時にはパブリックビューイング(PV)の会場に呼んでいただきました。そういうスポーツ系のイベントに行くと僕らの席を用意してくれます。スポーツをやっていた人間としては演技させていただいた上に、試合も見られてすごくありがたいです。

     ――PVはどこであったのでしょうか?

     ◆中馬 新宿の広場です。

     ◆安藤 臨時の特設会場でした。

     ◆中馬 10月にもニュージーランドの試合の時に呼ばれていましたが、それは台風でだめになりました。スポーツイベントがあると呼んでいただけてありがたいことです。

     ――演技の時には髪の毛も色とりどりにするのですね

     ◆安藤 イベントの2週間前くらいから色を抜いて白や金髪から色を入れていきます。見る人にもショックを与えようと。いかにみんな人にかぶらずに自分を出すかで色を模索しています。

     ――話は変わりますが、学生の立場で東京2020大会に対しての意見や疑問などはありますか?

     ◆中馬 東京で開催することで世界中から人が来て、国際化、異国の文化の人たちに会い、肌で感じることができることを期待しています。国際的な問題や相手を理解することを経験したり、想像の中でしかなかったことを体験できたりしたらいいです。演技する側として催しもので自分たちを見てもらえたらそれも貴重な経験かなと。

     ◆足立 東京なので身近です。うわさでは学生がボランティアをすると単位がつく学校があると聞きました。オリンピックが自分に近い感じがしました。国際的なイメージだったのですが、テレビでしか見たことのない光景が見られれば、世界が近くなる感じがします。

     ◆安藤 最近のオリンピックのあり方が自国のPRに偏りすぎている気がしています。万博に近いようなイメージです。「うちの国はこんなにすごいんだぞ」というアピール合戦だと、オリンピックの本来の姿からちょっとずれるのではないかと思うふしがあります。せっかく、東京でオリンピックが開かれるので、国民みんなを巻き込んで、スポーツをやっている人も見ている人も一体となって生まれるのがスポーツだという自分が素晴らしいと思っている部分が日本国民につたわる2020大会であってほしいです。

     ――自国のPRに偏るとはどのような意味ですか?

     ◆安藤 開会式の派手な演出や大がかりな予算の問題などです。いかにいい施設を作るかではなく、みんなが使いやすいバリアフリーな世界を作ることに予算を使った方がいいと思います。みんなが楽しめるのがスポーツだし、それをみんなが見に来られるようにバリアーをフリーにするのが必要だと思います。

    中馬一樹副代表はチームに入って柔軟性がアップしたという=吉田航太撮影

     ◆中馬 せっかく東京オリンピックとして招致をしたなら東京でやることにこだわる必要があるんじゃないかと思います。「復興」をうたうにしても地方をキャンプ地にするとか。ラグビーW杯の時、千葉県柏市がオールブラックスのキャンプ地となってにぎわったり、近くの神社の御朱印がオールブラックス仕様になったりしたと聞きました。そういうやり方もあったと思います。

     ◆足立 オリンピックに国民のひとりとして関われている感じがしていません。学生団体でオリンピックに関連した動きをしているところもほとんどない。学生主体で、東京オリンピックに関われたら、学生だからこそ気づけるポイントもあると思うので、学生主体でもっとなにか動けたらと思います。ボランティアとして使われるだけでなく。

     ――パラリンピックについてはどのようにお考えですか?

     ◆中馬 パラリンピックのことは、多くの人がオリンピックが終わると熱が冷めがちと感じています。ぼくらも障害者の方の施設に呼んでいただいて演技することもありますし、パラリンピックに出る方たちは、自分たちの想像をはるかに超えるレベルで競技をされていると感じています。車椅子テニスの国枝慎吾選手はものすごいですし、車椅子バスケや車椅子ラグビーの人たちの衝撃は激しい。今まで自分もあまり見てきませんでしたが、フルに楽しみたいです。

     ◆安藤 日本は先進国の中で障害者への理解が広がっていないのが現状だと思っています。パラリンピックを機に自分たちがバリアを作っていないかと、心の垣根を取り除ければと思う。

     ◆足立 パラリンピックをテレビで特集していたのを見て、本当に第一線なんだと、努力のレベルもすごく高い。パラスポーツを見てみたいし、体験してみたいと思いました。

     ――みなさんが注目している競技はありますか?

     ◆中馬 チアリーディングを始めて体操競技を身近に感じることが多くなりました。今までは人ごとでしたが、1回転、2回転、3回転ひねっているなど見方が変わりました。トランポリンのチケットを取った同期もいます。僕らも練習でトランポリンもあります。体操のタンブリングも身近に感じることがあるので、ショッカーズに入って見方、視点が変わりました。

     ◆足立 幼い頃から体操を見ているので体操はめちゃくちゃ好きですが、陸上競技も好きです。早稲田の卒業生の活躍にも興味があります。その点では競泳の瀬戸大也選手や渡辺一平選手も応援したいです。

     ◆安藤 スケートボードやクライミングなど追加された新競技に注目したいと思っています。大学に入って、まさか僕がチアをすると思っていなかった。マイナースポーツをやってみて、その魅力を日々かみしめているので、自分が知らなかった競技、かつ、みんなもやってきていないだろう、競技人口が少ない競技にフォーカスしていきたいなと思っています。

    早稲田大学SHOCKERS

     大学公認サークルで男子だけで演技するチアリーディングチーム。2020年1月現在、2年生9人、1年生20人、女子マネジャー4人の部員計33人。年2回は自主公演を開き、国内外の大会に出場、米国への遠征も行う。創設は2004年。当時、第一文学部に在籍していた狩野洋平さんを中心に始まった。チームの名前には「男性だけのパワフルなチアリーディングで衝撃を与えたい」という気持ちが込められている。SHOCKERSがモデルとなった、小説「チア男子!!」(朝井リョウ著)が出版され、テレビアニメにもなった。2019年には俳優、横浜流星さんと中尾暢樹さんのダブル主演となる映画化も果たした。日テレ「嵐にしやがれ」、テレビ朝日「MUSIC STATION」、フジテレビ「笑っていいとも」、NHK「紅白歌合戦」など多数のメディアに出演。

    本橋由紀

    毎日新聞オリンピック・パラリンピック室委員/東京編集編成局編集委員。1963年東京都生まれ。1987年入社。東京社会部、英文編集長、夕刊編集部デスクなどを経て2011年に福島支局長、13年地方部長など。18年7月から現職。高校時代は水泳部、早稲田大学ではラグビー蹴球部副務を務めた。17年のつくばマラソンを3時間43分59秒で走り、ベストを更新した。