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社説

拓論’20 中国の大国化と世界 発展の先の理念が見えぬ

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 中国の習近平国家主席は新年のあいさつで、年内に「全面的な小康(しょうこう)社会が完成する」と宣言した。40年前に鄧小平氏が打ち出した開発目標の最終的な達成を意味する。

 習氏が掲げる次の目標は先進国並みの「社会主義現代化強国」建設だ。しかし、一層の発展には課題も多い。国際社会と協調する姿勢がなければ、その達成は簡単ではない。

 儒教の経典「礼記(らいき)」で孔子は古代の理想社会を「大同(だいどう)」、それには及ばないが、優れた為政者がいれば治まる現実的社会を「小康」と呼んだ。

 改革・開放政策を始めた鄧氏はこの言葉を踏まえ、小康社会の実現という目標を初めて示した。1人当たり国内総生産(GDP)800ドルという当初の基準は20世紀末に基本的に達成されたが、その後の政権はより高い水準の「全面的な小康社会の建設」を新たな目標に据えた。

難題多い先進国化の道

 2008年のリーマン危機以降、高速鉄道や高速道路などインフラ建設が進み、国を挙げた科学技術開発で急速に先進諸国との距離を縮めた。昨年の1人当たりGDPは1万ドルの大台に乗る見通しだ。途上国からの脱却を目指した開発の時代に一区切りがついたといえる。

 韓国や台湾では開発独裁的な政権が発展の成功後、民主的体制に移行した。自由度を広げることで産業構造の高度化や技術革新を果たした。

 一方、西欧型の民主化を拒否する中国は強権体制のまま、先進国化を目指す。大国では前人未到の道だ。

 すでに高度成長の時代は終わった。輸出、外資導入、公共投資に頼った成長モデルは限界に達し、一人っ子政策で生産年齢人口も減少に向かう。日本のように少子高齢化への対応も課題になる。格差も著しい。共産党政権は経済発展で国民生活を向上させ、政権の正統性を保とうとしてきたが、今後は簡単ではない。

 習氏はより良い生活を求める国民の声に耳を傾け、「社会主義現代化強国」を目指すと表明している。だが、民主主義に代わる理念は見られない。むしろ、弁護士や人権活動家に対する締め付けが強化されるなど力で異論を抑える姿勢が目立つ。

 新疆ウイグル自治区では反テロを名目に多くのウイグル族が施設に収容され、共産党体制への順応を迫られているとされる。しかも、人工知能(AI)などの先端技術を監視システム構築にためらいなく使う姿勢が西側の価値観と衝突している。

 香港や台湾でも中国の強権的な体質に対するノーの声が拡大している。「一帯一路」構想で中国の影響力が世界へ拡大する一方、摩擦も増えた。過剰な債務で借金漬けになる「債務のワナ」が一例だ。

 習氏は「中華民族の偉大な復興」を「中国の夢」と位置づけた。現代に中華秩序をよみがえらせようとしているのかという懸念も高まる。

 巨大化した中国は国際秩序の破壊者にもなりうる。米中は近く貿易戦争収束に向けた第1段階の合意に署名するが、次世代技術や軍事、宇宙をめぐる競争は長期化するだろう。

米中対立が激化すれば、米国と同盟関係にある日本が最前線に立つことになりかねない。

変化を促す日本の役割

 今春には習氏が国賓として来日する予定だ。日本の対中世論は厳しいが、米中対立を背景に中国が日本の声に耳を傾ける姿勢を示していることはむしろチャンスともいえる。日中友好という言葉には歴史を踏まえた「不戦」の意味がある。中国の巨大化や情報革命など国際環境の激変に合わせ、「不戦」を永続的にしていくには新たな合意も必要だ。

 尖閣諸島周辺での中国公船の活動自制を求め、東シナ海を真の意味で「平和・協力・友好の海」にしていかなければならない。習氏は「中国の夢は決して覇権の夢ではない」と語っている。日中合意でそれが示せるなら、国際社会の懸念を減らすことにもつながるだろう。

 中国が変わることはないと決めつけるべきではない。実利を重視する中国はこれまでも状況の変化に応じ政策を調整してきた。安定した国際関係の重要性も認識している。香港やウイグル問題、対米関係についても率直に懸念を伝えればいい。

 孔子は小康社会では為政者が道義を失えば、たとえ権勢を誇るものでも味方を失い、滅びると諭している。習氏も聖人の警告は十分承知だろう。来年は中国共産党の建党100年だ。国際社会の懸念を踏まえ、「君子豹変(ひょうへん)」する中国を見たい。

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