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「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

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今週の本棚・この3冊

開高健 ひきたよしあき・選

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 <1>風に訊(き)け(開高健著/集英社文庫/759円)

 <2>パニック・裸の王様(開高健著/新潮文庫/605円)

 <3>開高健のパリ(開高健著/モーリス・ユトリロ絵/集英社/2200円)

 昨年は作家、開高健の没後30年、今年は生誕90年にあたる。18歳、大学受験失敗。浪人の夏に入院。ジンセイが川に漂い、沈みそうになった頃、貪(むさぼ)り読んでいたのは『週刊プレイボーイ』に連載していたライフスタイルアドバイス『風に訊け』(<1>)だった。食欲、性欲、賭博、文学、酒、旅、女。「停滞すると水は濁るでぇ」と開高健さんは私に呼びかけた。川の水の代わりに珠玉のアフォリズムを腹いっぱいに飲む。おかげで焦燥の氷が溶けた。ジンセイの独楽(こま)が回り始めた。

 大学に入って、小説を読む。心が光耀(こうよう)したのは『パニック』(<2>)だった。人の心とネズミの薄汚さに、どぶ水にも似た臭気が漂う。一行進むごとに吐き気がした。しかし、そこに登場するグラスから漂うレモンの新鮮な香りと水晶のような酒の描写が美しい。ウォッカを飲みたくて仕方ない。開高センセイは、コピーライターだった。「私も開高さんのようになりたい」と無邪気で幼稚な脳みそのまま広告業界に飛び込んだ…

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