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今週の本棚

橋爪大三郎・評 『大きな字で書くこと』=加藤典洋・著

 (岩波書店・1980円)

 二○一九年五月に急逝した批評家加藤典洋氏のエッセイ集。一七年一月から亡くなるまで雑誌に連載されていた。

 折々に印象深い人びとを、加藤氏は順に紹介していく。仏文学の大学院をすぐ中退した斎藤くん。いつまでも助教授にならない森本さん。文人は用済みだと大学を辞めた寺田透先生。才能あるが欠落も抱える孤独な個性らに、加藤氏は激しく共振する。傷つき孤立し、同じ寂しい心象風景に佇(たたず)んでいるのだ。

 連載のうち複数回に及ぶテーマは「父」「中原中也」「私のこと」の三つだ。加藤氏の父親は特高の警察官で、山奥の学校で教えていた無教会派のクリスチャンを、治安維持法で検挙した。これが許せず加藤氏は父と衝突し、それが尾をひく。中也は、文章が読めなかった時期の加藤氏が唯一読めた作家だ。渾身(こんしん)の中也論を書き上げ、航空便で送った原稿が紛失した。「私のこと」は挫折と喪失の記憶。幼稚園入試に落ち、悪ガキ…

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