- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
大学入学共通テストの今後のあり方を検討する文部科学省の有識者会議が15日、初会合を開く。導入が見送りとなった英語民間試験や国語・数学の記述式問題の扱いなどを話し合う。
当面は委員が自由に意見を交わし、1年間をめどに結論を出す。まずは制度が頓挫した原因を分析し、再び迷走する事態を防がなければならない。
特に詳しい検証が必要なのは英語民間試験導入の破綻だろう。文科省は新たな英語試験を2024年度の入試から始めることを目指しており、新制度でも「読む・聞く・書く・話す」の4技能を重視する従来の姿勢を変えていない。
大学入試で英語民間試験の活用を求める提言は13年4月、経済同友会と自民党の教育再生実行本部が相次いで公表した。
経済同友会は、日本企業の国際競争力を高める上で、実用的な英語力が学校教育で身についていないことがネックになっていると批判した。「話す」を含め4技能を問う民間試験の導入で大学入試を変えれば、英語教育も変えられると主張した。
その後、この考え方は大学入試改革の柱になっていった。
最終的に暗礁に乗り上げた直接の原因は、具体的な制度設計の段階で、受験生の家庭の経済事情などによって不公平が生じる問題を解消できなかったことだ。
だが、根本的な原因は、改革が政財界主導で始められ、高校、大学という当事者の声をじっくり聞く姿勢を欠いたまま進んでいった点にあるのではないか。4技能を共通テストで測るという出発点から問い直す必要がある。
本来、大学入試とは切り離して、授業で4技能とも高める工夫をしていくべきだ。教員の指導力を向上させる研修なども欠かせない。英語教育の改善は、そうした粘り強い取り組みの集積により可能となる。
入試改革をカンフル剤にして教育を変えるという発想は、そもそも乱暴だ。
新たな会議では、具体的な制度設計を視野に入れ、高校、大学側との対話を重視してほしい。現場本位でない議論を重ねても、同じ失敗を繰り返すだけだ。