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SUNDAY LIBRARY

開沼 博・評『時間とテクノロジー』佐々木俊尚・著

因果論が機能しない不条理を乗り越える新しい視座の提供

◆『時間とテクノロジー』佐々木俊尚・著(光文社/税別1800円)

 2004年の春先、流行(はや)り始めたばかりのSNS「mixi」をはじめた。登録順に割り振られるIDは2000番台。後にその1万倍以上の利用者を抱えることになったSNSのそれなりの初期ユーザーになったのだった。ただ熱中したのは一時期だけで、いまは何年かに一度思い出したように開いてみるだけ。あの頃に頻繁にmixiを使っていた友人たちも私同様、長らくログインしている様子はない。まだ大学生のままだったり何者かにならんと夢を語っていたり、それぞれの15年近く前の姿がある。ただ、不思議とそこに郷愁はない。久しぶりに卒業アルバムを開いた時に覚える、取り戻しえない何かが失われたような感覚はない。この事例に限らず、さまざまなところでこういった「郷愁の不在」に直面する経験をしているようにも思う。デジタル化が一定程度進んだ後の映像・画像に残る10年以上前の街の風景。マーケティング上過度に強調される一次産品の手触り感。いずれも郷愁がない。過去が過去に見えない違和感を覚えずにはいられない。

 技術の進展が、私たちの時間への感覚の変容を引き起こしている。その変容を、さまざまな科学的・技術的理論、重要な文学・映画も含めて見渡し、時間論として輪郭を描いたのが本書だ。

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