カジノを含む統合型リゾート(IR)事業参入を巡る汚職事件で、秋元司衆院議員が収賄容疑で東京地検特捜部に再逮捕された。
参入を狙う中国企業側が負担した中国視察旅費や講演料について、特捜部は賄賂に当たると新たに判断した。起訴分と合わせ、賄賂額とされたのは計約730万円にも上る。
一貫して秋元議員は容疑を否認している。しかし、贈賄側との関係の深さが明らかになってきた。IR担当副大臣の権限を背景にした特定企業との癒着の疑いが強まっている。
秋元議員は、中国企業からIR整備区域の上限数を増やすよう要望され、IR実施法案に具体的な数を盛り込まないよう担当者に伝えたという。この企業が北海道で計画するカジノに空港の併設が可能かどうか、国土交通省に照会もしていた。
特捜部の捜査に、贈賄側は他の国会議員5人にも現金を100万円ずつ渡したと供述した。このうち下地幹郎衆院議員は記者会見で受領を認め、報告書への不記載も明かした。
5人中4人は、中国企業がカジノを計画した北海道と沖縄県を地盤としている。残る1人もカジノを推進する議員連盟の幹部だった。
中国企業は幅広く政界工作を図っていた疑いがある。特捜部はこれらの議員からも任意聴取している。
事件は、カジノが利権を生む構造を浮き彫りにした。政府の責任者が業者の働きかけを受け、便宜を図ろうとしていたのは重大な問題だ。
それなのに政府は、事件とIR制度は別との姿勢を崩さない。カジノ事業者を審査するカジノ管理委員会も予定通りに発足させた。
菅義偉官房長官は「捜査対象の中国企業は実績もない。IR以前の問題ではないか」と述べ、取るに足らない話といわんばかりだった。
日本維新の会も下地議員を除名処分にしたが、大阪誘致を念頭にカジノ推進の姿勢を変えていない。
事態の深刻さを認識していないのではないか。捜査結果が出るまでスケジュールを凍結し、カジノ整備の仕組みを再点検すべきだ。
各種世論調査ではカジノに対する懸念が根強い。事件を受けて、7割が見直しを求めたとの調査結果もある。これでも政府は、カジノ整備を推し進めるのか。