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超やさしいイラン解説

中/強烈なペルシャの誇り今も 暦も独自

ペルシャ帝国の都ペルセポリスの遺跡=イラン南部シラーズ郊外で2011年、鵜塚健撮影

 イラン革命防衛隊の司令官が米軍に殺害されたのをきっかけに、一時対立が激化した米国とイラン。普段は縁遠い中東の国イランって、一体どんな国なんでしょうか。4年間(2009~13年)のイラン滞在経験をふまえ、FAQ(よくある質問)形式で、「上」に引き続き、やさしく解説してみます。【鵜塚健/統合デジタル取材センター(元テヘラン支局)】

西暦気にせず、イラン暦で生きる

 ――中東といえばアラブという言葉を思い浮かべますが、イランもその仲間なんでしょうか。

 ◆中東イスラム諸国の言葉と民族をふまえ、あえて大きく分けると、アラビア語を話すアラブ諸国、ペルシャ語のイラン、トルコ語のトルコに大別されます。日本から見れば、人々の見かけも言葉も同じように感じますが、実際はかなり違います。欧米の人たちにとって日本、韓国、中国の人々が区別しにくいのと同じ構図でしょうか。

 イランは古い起源を持つペルシャ語を公用語とし、3月下旬を新年とするイラン暦(太陽暦)を今も使っています。世界の大半が西暦を基準にして生活や仕事を進める中、イラン社会は西暦をほとんど気にせず、独自の暦で動いています。ちなみに2020年1月は、イラン暦では1398年の終盤です。イスラム教の国のため、教典コーランが書かれているアラビア語も学び、アラブの文化も取り入れますが、同時に大事にしているのは古代から続くペルシャ文化です。

 日本の4・5倍ほどの広さの国土に約8000万人が住んでおり、民族的には約半数がペルシャ系で、他にアゼリ系、クルド系、アラブ系など多くの民族が混在します。都市部に定住する住民がいる一方で、内陸部には今も季節に応じて移動しながら羊を飼い、じゅうたんを織るなどして暮らす遊牧民もいます。

2500年前からの誇り、今も

 ――イラン人は誇り高い民族と言われますが、その背景は何でしょうか。

 ◆イランの原点は、紀元前550年にできた世界初のペルシャ帝国(アケメネス朝)にあります。当時の宗教は、世界最古の一神教とされるゾロアスター教です。アケメネス朝はマケドニアのアレキサンダー大王に滅ぼされますが、その後も領土を復活、縮小を繰り返しながら、ペルシャの歴史は続きます。近世のサファビー朝でも経済的、文化的に繁栄し、当時の首都イスファハンはその豊かさから「世界の半分」と言われました。イランがイスラム教シーア派を国教としたのもこの時代です。

 しかし、近現代に入り、イランの領土は縮小傾向で、英国やロシアに半ば植民地化された時期もありました。パーレビ朝では米国と蜜月関係になり、都市部を中心に潤う一方、貧富の差も広がります。イスラム革命(1979年)以降は、石油生産や製造業などで独自の発展を目指しますが、欧米諸国との対立が続き、不振にあえぎます。

 一方で、近年はサウジアラビアやアラブ首長国連邦など湾岸アラブ諸国が、欧米と良好な関係を築きながら豊富な石油資源や金融などで経済発展をとげます。長い間、イランとライバル関係にあるトルコも一定の欧米化、世俗化を図りながら発展します。長い歴史を持ち、誇り高いイラン人は、湾岸アラブ諸国やトルコに対して強烈な対抗心を持っています。

 イランは教育水準は高いものの、国内に十分に能力を生かせる場がないことから、欧米への「頭脳流出」が激しいことでも知られます。私がイラン滞在当時、タクシー運転手やじゅうたん商の男性から「NASA(米航空宇宙局)や(IT大手の)グーグル社の幹部にはイラン人がたくさんいるんだ」という自慢話を何度も聞かされました。イラン人がいかに優秀で、米国という超大国でも十分通用するんだということを伝えたいのです。イランの潜在的な力が高いのは確かで、欧米からの制裁で経済的に疲弊が進んでいく母国の現実に、多くのイラン人はやりきれない思いを持っています。

語り継ぐシーア派の悲劇、強い被害者意識も

 ――イスラム教はスンニ派、シーア派に分かれるようですが、違いは何なのでしょう。

 ◆まず、世界中のイスラム教徒を大きく分けるとスンニ派が85%、シーア派が15%とされます。イランはシーア派が国民の大半を占める珍しい国です。他にシーア派が多い国はイラク、アゼルバイジャン、バーレーンくらいしかありません。

 両派の起源はこうです。イスラム教は7世紀前半に起きた宗教で、預言者ムハンマドが神の教えを伝…

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鵜塚健

1993年入社。大阪社会部、外信部、テヘラン支局長、京都支局次長などを経て2019年5月から統合デジタル取材センター副部長。3年半のイラン生活で中東料理にはまる。共著に「縦並び社会」(毎日新聞社)、単著に「イランの野望~浮上するシーア派大国」(集英社)。法政大大学院グローバル地域研究所特任研究員。

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