子年がスタート 各バレエ団の「ねずみの王様」大集合
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2020年、子(ね)年の開幕だ。バレエファンには「くるみ割り人形」の舞台でネズミたちの大活躍を見るのが師走の恒例行事だから、十二支が一巡する度に「去年(こぞ)今年」を貫く勢いで、この小動物と付き合うことになる。
チャイコフスキーの三大バレエのうち、音楽的には最高傑作ともされる「くるみ割り人形」。ホフマンの原作タイトルは「くるみ割り人形とねずみの王様」であり、王様は主役に匹敵する。いや、さまざまなバージョンがある中で主役のいでたちには差異が出にくいことから、王様こそが各演出を象徴するキャラクターとも言えるだろう。新年を期して始めるこの連載、初回はえとにちなんで各バレエ団の王様に大集合いただき、かるたのように並べてみることにした。
まずご登場願うのは、日本での年越しが恒例となっているキエフ・バレエの王様。辺りを払う、この威厳たるや……。寒色の衣装といい隈(くま)取り風のメークといい、北の国の王者にふさわしい。
一方、日本の王様たちの頭部は、かぶりものが一般的だ。クリスマスの夜、プレゼントのくるみ割り人形が王子様に変身し、少女を不思議な世界へいざなう……というファンタジーだけに、客席には子供の姿が圧倒的に多く、悪役であるねずみの造形も愛らしくなる。
その筆頭は、牧阿佐美バレエ団の王様だ。きらびやかなハーレムパンツをはいて、愛嬌(あいきょう)たっぷり。太刀を振り回して人形たちに闘いを挑むものの、いかんせん手下たちがふわふわで、戦力にはなりそうにない。
バレエシャンブルウエストの舞台も、子ねずみたちの可愛らしさが目を引く(パリ・オペラ座では、バレエ学校の生徒たちを「屋根裏の子ねずみ」と呼ぶそうだ)。中央で勇壮に跳ぶ王様は、深紅の宮廷服姿だ。
ロシアで新調された東京バレエ団の衣装も、華麗なるかぼちゃスタイルだ。生地はベルベットだろうか、光沢と高級感にあふれている。背後で巨大化したツリーの美しさにも注目してほしい。
肩章の付いたシックな軍服をお召しなのは、井上バレエ団の王様。闇の支配者らしく、漆黒のトータルコーディネートで決めている。
東京シティ・バレエ団の王様も軍人系で、さっそうたる身のこなしにほれぼれ。二股の剣と赤いマント裏がトレードマークだ。
センスが際立つスターダンサーズ・バレエ団は、ディック・バードさんによる衣装。ミルク・クラウンを思わせる王冠をちょこんと頭に乗せ、サ…
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