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特集ワイド

この国はどこへ これだけは言いたい 「ウルトラマン」監督・飯島敏宏さん・87歳 バルタン星人は反面教師

飯島敏宏さん=根岸基弘撮影

 新元号「令和」にわいた2019年に続き、20年の日本は再びの東京五輪で大騒ぎとなるのだろう。かつて「ウルトラマン」シリーズの監督を務めた飯島敏宏さん(87)は、世間が明るく晴れやかな気持ちで受け止めているこの二つの出来事の向こうに、少年時代の遠い日を思い出す。

 8歳だった1940(昭和15)年、日本書紀の神武天皇即位を紀元とする「皇紀2600年」に日本中がわいた。同年9月には、東京五輪が開催予定だった。だが、37年7月の盧溝橋事件に端を発した日中戦争は拡大の一途をたどり、日本政府はやむなく開催権を返上。アジア初の五輪開催は幻となった――。

 「その頃はもう、日本は負け戦になっていたのにね。政府も軍もそういう情報は出さないから僕らは全然知らず、勝ち続けていると思っていた。昨年は令和、令和って、みんなワーワー騒いだでしょ。そして今年は五輪でまた騒ぐ。似ていますよね。誰かが画策しているというんじゃない、でも一つの方向に流れている。そういう自覚のない『空気』のようなものが怖いなあと思いますね」

 昨年8月、自らの戦争体験を元にした初めての小説「ギブミー・チョコレート」を米寿を前に出版した。描いたのは戦時下の、ごくありふれた少年少女たちの日常。「限りなく事実に近いフィクション」だという。東京・本郷で洋服店を営む家に生まれ育った主人公のヒロシは、幼い日の飯島さんだ。明るくのびのびと駆け回っていた少年たちは、軍国主義の影響を受け、いっぱしの「少国民」に成長していく。

 戦争の時代を知る者として、何らかの形で当時のことを書き残したいという気持ちはずっとあった。初めて形にしたのは20年ほど前だ。あるテレビ局が開局記念で募集したテレビドラマ企画に応募した。

 「グランプリに選ばれると作品がドラマ化されるんですよ。その時の審査員の中の一番エライ人から、実際にこれを作るといくらかかるかと聞かれてね。『受注して作るとしたら、少なくとも3億円はかかりますね』って答えたの。それは無理だなあと言われ、佳作になっちゃった。あれが悔しくてね」

 本格的に執筆を始めた直接のきっかけは、同窓会での、小説のモデルにもなっている幼なじみたちとの会話だ。「なぜイスラム過激派の少年少女たちは自爆テロをやるんだろう。よくできるなあ」と。

 「ちょっと待ってくれよ。僕たちだって同じじゃないか。『(投下された)焼夷(しょうい)弾を見たら覆いかぶさって消せ』『米兵を見たら突き殺せ』。そう教わったじゃないか。教えられたことを45年の8月15日まで信じていたじゃないかって強く感じたんですよ。それで改めて書こうと思いました」

 伝えたいのは、いかに教育が重要かということだ。小説で主人公の乳兄弟でもある親友チュウのモデルになった級友は…

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