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令和のジャーナリズム同時代史

(2)氏名公表求める投稿にネットの批判が殺到

聖マリアンナ医科大学病院に警察車両と共に到着したアルジェリアの人質事件の遺体を乗せた車両(手前)=川崎市宮前区で2013年1月25日午前10時33分、梅村直承撮影

 そのツイートを投稿したのは、「2013年1月21日23時44分33秒」と記録されています。「亡くなった方のお名前は発表すべきだ。それが何よりの弔いになる。人が人として生きた証しは、その名前にある。人生の重さとプライバシーを勘違いしてはいけない」。菅義偉官房長官の深夜の記者会見をテレビで見て、その感想を述べたものでした。菅官房長官は「殺害された日本人の氏名は公表しない」との方針を明らかにしたのでした。

 イスラム過激派の武装勢力が、アルジェリア東部の天然ガス精製プラントを襲撃したのは、菅官房長官の会見の5日ほど前、1月16日の未明でした。プラントで働いていた日本人10人をはじめ外国人ら約800人が人質になったのです。そして、日本人10人のうち7人が殺害されたことを日本政府が確認し(後に人質は17人でうち10人が殺害されたと判明)、深夜の官房長官会見が開かれたのでした。しかし、氏名については、遺族の了解がとれず、プライバシーも配慮して公表しないというのです。それまで事件の被害者、とりわけ死亡した人の氏名が公表されるのは、自明のことであり、極めて当然の対応でした。私は政府の判断に驚き、「亡くなった方のお名前は発表すべきだ。それが何よりの弔いになる……」という投稿をしたのです。私としてはどこまでも真っ当で常識的な提起だと信じていました。

 翌朝、スマートフォンでツイッターアカウントを開いた私は、別の意味で大いに驚くことになります。一晩でフォロワーが数百人も増えていて、どうしたのだろうとリプライを見ると、私の投稿への罵詈(ばり)雑言であふれていました。「ゲスの極み」「お前が決めることじゃねえわ」「発表したらお前らマスコミがたかるからなんだろうが」……。すぐに私の投稿への反発を集めたまとめサイトが作られ、いわゆる「炎上」になりました。

 私の投稿の「炎上」と並行して、朝日新聞にも被害者の実名報道について反発の矛先が向いていました。政府は氏名を公表しませんでしたが、報道各社は独自の取材で一部の被害者の氏名を割り出し報じていました。朝日新聞が実名を報じた被害者の親族にあたる人物が「実名報道をしないという約束をしていたのにそれを破った」「朝日新聞の報道によって報道各社が遺族宅に押し寄せ大変な迷惑」と抗議し、取材に集まった記者たちを撮影した動画とともにインターネットに投稿したのでした。朝日新聞は別の遺族から了解を取って報道したようですが、「実名報道=悪」「マスコミ=悪」という構図の中で反発は止まりませんでした。

 私は、説明を重ねれば実名報道の意義を理解してもらえると信じていました。ツイッターに連続投稿して、私の考えを伝えようとしました。その時の投稿は次のようなものでした。「私のつぶやきに多くの意見をいただきました。実名匿名の問題は実に奥深くすべてを言い表すのは難しいのですが、折に触れ、私の考えをお話ししたいと思います。きょうは新聞協会賞受賞の岩手日報の報道を紹介しながら、私ももう一度考えてみます」「東日本大震災の時、岩手日報は避難所に張り出された被災者の名簿をそのまま記事にしま…

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小川一

1958年生まれ。1981年に毎日新聞社入社。社会部で事件取材を長く担当。社会部長、編集編成局長、取締役・編集編成担当などを経て18年6月から毎日新聞グループホールディングス取締役。

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