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的川博士の銀河教室

的川博士の銀河教室 581 古墳を宇宙線で透視調査

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卑弥呼の墓が見つかるか?

 中国の昔の書物に「三国志(さんごくし)」というとても面白い本があるのですが、最後のあたりに、3世紀の日本列島がいくつもの国に分かれていて、その中の最大の国「邪馬台国(やまたいこく)」の王様が卑弥呼(ひみこ)という女性だったと書いてあります。

 その「邪馬台国」が北九州(きたきゅうしゅう)にあったのか奈良にあったのかについて大論争が続いています。そして、卑弥呼の墓が見つかれば、その論争に決着がつくかもしれません。そのころ作られた大きな墓は、「古墳(こふん)」として全国にいっぱい残っており、奈良はそれが特に多いところです。古墳の中には全長200メートルを超(こ)えるような巨大(きょだい)なものもあって、これらは特に大きい力を持った当時の支配者の墓だと思われます。

 奈良・桜井にある「箸墓(はしはか)古墳」は、その巨大古墳の一つ。全長が280メートルもあり、卑弥呼の墓ではないかと考える人もたくさんいて、ずっと注目を集めてきました(写真1)。でも宮内庁が管理している箸墓古墳は、立ち入り禁止なので、掘(ほ)って詳(くわ)しく内部を調べることができないでいます。そこでいま考古学者たちは、宇宙科学の成果を活用して秘密の古墳の内部を詳しく調べているのです。

 調査を実施(じっし)しているのは、奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所と名古屋(なごや)大学の研究チーム。チームはすでに一昨年、宇宙からやってくる「ミューオン」という素粒子(そりゅうし)を使って、奈良・斑鳩(いかるが)の春日古墳や奈良・大淀(おおよど)の石神古墳に石室と見られる空間のあることを突(つ)き止(と)めました。エジプトでは、同じ方法でクフ王ピラミッドに未知の巨大空間があることも分かりました。

 これに力を得たチームの人たちは、宇宙から飛来するミューオンの軌跡(きせき)を映す高感度フィルムを取り付けた装置(写真2)を、2018年12月に箸墓古墳の周囲4カ所に設置し、フィルムを交換(こうかん)しながら調査を粘(ねば)り強(づよ)く続けています。

 ミューオンは物質を構成する最小単位である「素粒子」の一つで、厚さ1キロの岩盤(がんばん)でも突(つ)き抜(ぬ)けるほどのエネルギーを持ち、みなさんの体を調べるときに使うエックス線よりも透過(とうか)力があります。ですが、密度の高い物質に当たると、さすがに少しだけ透過量が減り、古墳内に空洞(くうどう)があると透過しやすくなります。だから、ミューオンの通り道をとらえたフィルム画像をコンピューターで分析(ぶんせき)すれば、内部の構造が推定できるのです(図)。

 箸墓古墳内部には、すでに数年前の観測で、直径約40メートル、高さ約5メートルの円い丘(おか)のあることも分かっており、今回4月ごろまで続けられるミューオン観測で、被葬(ひそう)者が埋葬(まいそう)された竪穴式(たてあなしき)石室などの空間が確認されるかもしれません。

 将来理科系に進む人たちでなくても、宇宙のことを勉強することは、いろんな仕事で画期的な成果を生み出すことに役立ちそうですね。箸墓古墳の調査結果を楽しみに待つことにしましょう。


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。

日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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