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米中が貿易合意に署名 対立の「核心」は依然残る

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 米中両政府は、焦点となっていた貿易交渉の合意文書に署名した。中国が米国の農産物や工業製品の輸入を大幅に増やし、米国は対中制裁関税の一部を緩和することが柱だ。

 大国同士が高関税を掛け合う米中貿易戦争は世界経済を混乱させた。中国の昨年の成長率は29年ぶりの低水準に悪化し、中国向け輸出が不振だった日欧も景気が停滞した。

 署名で米中対立にはひとまず歯止めがかかる。しかし世界経済を覆う霧が晴れたとは到底言えない。

 まず問題なのは、米国が力ずくで中国に22兆円という巨額の輸入目標をのませたことだ。制裁を仕掛けたトランプ大統領は、大統領選に向け成果を盛んにアピールしている。

 中国がいくら巨大市場でも、これだけの目標を達成するには米国以外からの輸入を減らさないと困難との見方が強い。身勝手な「米国第一」主義によって、日本の自動車輸出などにしわ寄せが及びかねない。

 もっと深刻なのは、米中対立の「核心」が依然残っていることだ。

 中国政府が企業に支給する巨額補助金の問題だ。中国にとっては国家主導の経済成長という共産党支配の根幹に関わる。譲れない一線であり今回の交渉では先送りされた。

 米国は、中国の輸出競争力を不当に高めていると批判してきた。トランプ氏はこうした構造問題も早急に交渉したい意向を示している。制裁関税の多くを撤回していないのも中国への圧力だ。大統領選の情勢次第では再び強硬姿勢に転じかねない。

 中国は今、財政出動などで経済を支えている。制裁強化で景気がさらに落ち込めば、財政頼みを一段と強めて、構造改革を遅らせる恐れがある。米国にもマイナスだろう。

 一方、中国の補助金は日欧も問題視している。中国が改革に取り組まなければ、米国の強硬措置を招き、対立を再燃させるだけではないか。

 米中は今回、合意が守られているかを閣僚などが定期的に検証する協議の枠組みを設けることも決めた。米国には、中国の対応が不十分なら追加制裁する狙いもあるようだ。

 だが米中は大国として国際秩序の維持に努める責任がある。体制が異なっても安定した関係を築くことが求められる。署名を足がかりに通商関係の正常化を図るべきだ。

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