メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

熱狂ゲノム

数十万従業員の遺伝子データを集めビジネスチャンスを探る大企業の思惑

遺伝子解析に利用されるチップを示す東芝の担当者=仙台市で2019年10月31日午後4時22分、柳楽未来撮影

 仙台市郊外の閑静な住宅街にある東芝の解析センター。マイナス80度に保たれた冷凍庫には、専用容器に入った数千人分の血液が整然と保管されていた。「これは提供に同意した従業員の血液。新たな事業に向けて近く、ここで従業員の遺伝子解析を始めます」。雨宮功・ライフサイエンス推進室長が力を込めた。

従業員の遺伝情報を健診記録と合わせ巨大データベース構築

 東芝は2019年、世界的にも例のない「遺伝子ビジネス」に乗り出した。それは、自社やグループ企業の従業員の遺伝情報を集め、健康診断の記録などと合わせた巨大データベースの構築だ。遺伝情報と、生活習慣病など疾患の関連性を分析する。将来的には契約したほかの企業の従業員についても遺伝子を調べ、個人の遺伝情報に基づいた予防法などを提供する事業につなげる。契約企業にとっては、従業員の健康や医療費の削減につながるメリットがあるとアピールしている。

 不正会計や原発事業の巨額損失で深刻な経営危機に陥った東芝。新たな事業を模索する中で目を付けたのは、グループ企業を含む約13万人の従業員の個人情報だった。

 日本の企業は法律で毎年の健康診断が義務づけられており、東芝には数十年分の従業員の健診記録が保存されている。さらに、会社の健康保険組合にはレセプト(診療報酬明細書)もあり、投薬の記録も残る。「これらに遺伝情報を組み合わせたデータは、これまでにない価値がある」(雨宮室長)。来年度内には従業員1万人分の遺伝情報が集まる見込みで、将来的には他企業を合わせ数十万人分を集める。東芝は、遺伝情報の解析を含めた「精密医療」を新規成長事業の一つに位置づけ、24年度以降に黒字化を目指す計画だ。

長期間追跡、創薬の研究開発などに利用

 このように集団を長期間追跡してデータを集める医学調査はコホート調査と呼ばれ、一般的には特定の地域住民が対象になる。だが、住民一人一人の血液を採取するには手間ひまを要する上に、転居などで継続した調査が難しいという課題を抱える。一方で東芝のように日本の大企業は、定期健診で数万人規模の従業員の情報を一気に得られる。定年まで同じ企業に勤める人も多く、追跡しやすい。

 東芝によると、同意を得て集めた従業員の遺伝情報について、改めて同意をとり、そのデータベースを創薬の研究開発などに利用する可能性もあるという。米沢実・新規事業推進室長は「遺伝情報の利用がビジネスとして成り立つことを示したい」と自信をみせた。

 グループ企業を…

この記事は有料記事です。

残り1693文字(全文2724文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 落語家の桂文枝さん 67歳妻と99歳母が死去 今月下旬に相次ぎ

  2. 東名あおり運転デマ投稿、強制起訴の被告が死亡

  3. 皇族に人権はない? 「眞子さまと小室さん」ご婚約内定から見えてきたこととは

  4. 特集ワイド 二階派で活動2年、自民入り目指す細野豪志氏 批判されても私は違う道 安保政策は一致、人間関係には苦慮

  5. 東名あおり運転デマ投稿 強制起訴の被告死亡で公訴棄却へ

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです