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「この世界の片隅に」新作 すずとリンの会話が表す「家制度」「貧困」

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」で主人公すず(左)とリンが遊郭の路上で会話する場面©2019こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 戦前・戦中の市井の人々の日常生活をつむいだ大ヒットアニメ「この世界の片隅に」に新たなエピソードを加えた新作「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が上映中だ。新作では広島から18歳で呉に嫁いだ主人公・すずと呉の遊郭で働く女性・リンとの交流が描かれ、「前作とは全く違った印象」などとSNS上でも話題となっている。歴史学者の一ノ瀬俊也・埼玉大教授(日本近現代史)はこの2人が会話するシーンについて「家制度がはらむ問題や貧困を非常にうまく表現している」と話す。どういう意味だろうか。詳しく聞いてみた。【牧野宏美/統合デジタル取材センター】

 少しおさらいしておこう。2016年11月に公開された「この世界の片隅に」はこうの史代さんの同名の漫画が原作。軍港のある広島県呉市の北條家に嫁いだすずが、戦況が悪化する中で日々の暮らしを生き、大切なものを失いながらも前を向く姿を描く。片渕須直監督が当時の文献や地図を徹底的に調べて追求した戦時下のリアルな日常描写が人気を呼んだ。400館以上で上映され、210万人以上を動員。公開から昨年12月19日まで1133日間、全国のいずれかの劇場で上映され続けるという異例のロングランを記録した。

 新作は、「この世界の片隅に」を約2時間以内に収めるために大幅にカットしたリンのエピソードを中心に復活させた。250を超えるカットが加わり、約40分長くなった。すずが迷い込んだ遊郭で出会ったリンとの交流をじっくりと見せるほか、すずの夫・周作とリンとの過去も明らかになり、SNSでも「(前作と)全く違う映画になっている」「奥が深い。改めて脱帽」などと称賛の声が上がっている。リピーターも多いという。

 一ノ瀬教授は約5年前から、「風立ちぬ」「火垂るの墓」など戦争をテーマにしたアニメを題材に学生に歴史を教えている。学生に関心を持ってもらうのが狙いで、「この世界の片隅に」も18年度、原作をベースに15回分も授業をした。「密度が濃いので十分成り立ちます。戦争を教える上で、例えば当時の人が軍艦や飛行機に憧れた話など含めて多面的に伝えていかないと理解が深まらない。『戦争はやってはいけない』だけですませず、なぜ戦争は起きるのかを考える必要があるからです。『この世界』も、歴史学の知識を踏まえると違った見方ができて、そこに面白さがあります」

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残り3612文字(全文4587文字)

牧野宏美

2001年入社。広島支局、大阪社会部、東京社会部などを経て19年5月から統合デジタル取材センター。広島では平和報道、社会部では経済事件や裁判などを担当した。障害者や貧困の問題にも関心がある。温泉とミニシアター系の映画が好き。

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